研究実績の概要 |
顕著な活性を有しながら構造が未解明である2種類の天然抗菌物質を選択し、合成研究による絶対立体配置を含めた真の構造決定を目的に合成研究を行った。 既に研究を完了しているGlabramycin類に加え、本年度は、薬剤耐性ピロリ菌に対し抗菌活性を示すセスキテルペンに関する光学活性体合成と立体化学の決定に専念して研究を遂行した。 その結果、昨年度までに達成しているラセミ体合成終盤のヘミアセタール中間体に対して、光学活性アルコール類を作用すると、ジアステレオマー法により光学分割が可能となることを見出した。中でも(-)-メントールとのアセタール形成を行った際に、シリカゲルクロマトグラフィーでの各異性体分離が容易に行えるだけでなく、一方のジアステレオマーの結晶化が可能であることを見出した。さらに、光学分割により得られた結晶性アセタールに関しては、X線結晶構造解析により絶対立体配置を確実に決定することが出来た。光学分割により得られた両鏡像体は、それぞれラセミ体合成と同様の経路で最終目的物へと誘導し、両鏡像体の合成を達成した。合成したセスキテルペンの両鏡像体の各種スペクトルは天然物と完全に一致した。また、合成品の比旋光度を報告されている天然物のデータと比較したところ、天然物の絶対立体配置を1R,2S,3R,4Sであることを決定することも出来た。また、以前のラセミ体合成の経路を一部改良し、より簡便な合成経路を確立することに成功した。 現在、最終報告としての詳報を投稿準備中である。
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