研究課題
当初の計画であったルシフェリン酸化物の構造が、国際共同研究により決定された。これにより、反応メカニズムが解明することができた。その反応経路は、これまでに知られていたどの生物発光反応とも異なるジオキセタン構造を経ないものである点で特筆される。また、ルシフェリンの誘導体を合成すると、発光スペクトルを変えられることもわかった。これは今後の応用を考える上では重要な知見であり、またルシフェリンがライトエミッターを作り出すもとになっていることを強く示唆する重要な結果である。さらに、研究代表者が中心となり、発光キノコの子実体にヒスピジンが確かに微量ながら含まれていることを確認した。これにより、発光キノコにヒスピジンが検出されないというこれまでの批判に答えることができた。また、ルシフェリン酸化物がカフェー酸を経てリサイクルされ、ふたたびルシフェリン前駆体であるヒスピジンに戻されることが示された。これによりキノコの持続的な発光のメカニズムや、発光キノコにヒスピジンがごく微量しか含まれない理由が説明された。ヤコウタケの幼菌は発光しないが、これにヒスピジン溶液をかけると数秒以内に強く発光し始めることも確認された。これは、ヤコウタケ幼菌がルシフェラーゼを持っているがヒスピジンを持っていないために発光しないことを示す結果である。以上のような新たな知見をもとに、今後ルシフェラーゼの特定が進められるものと思われる。
1: 当初の計画以上に進展している
目標であったルシフェリン酸化物の構造が、ロシア・ブラジルとの共同研究により決定され、サイエンスの姉妹紙Science Avdancesに受理された。さらに、ルシフェリン前駆体のリサイクル経路の存在が確認され、研究代表者を筆頭著者兼連絡著者とする論文に発表された(生物発光科学発光の専門誌Photochem. Photobiol. Sci.)。これにより当初の予定がすべて遂行された。
予定通りルシフェラーゼ遺伝子の特定を目指して、国際共同研究を進めている。方法としては、発現クローニングを検討している。
ルシフェリン酸化物の特定に研究を集中したため、ルシフェラーゼを特定するために使う分子生物学試薬類を購入しなかったため。ルシフェリン酸化物の特定とメカニズムの解明は、当初の予定では平成30年度迄続く予定であったが、平成29年度中に研究が完成したので、平成30年度に分子生物学試薬類と器具類を買うことになる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Science Advances
巻: 3 ページ: e1602847
10.1126/sciadv.1602847
Photochemical & Photobiological Sciences
巻: 16 ページ: 1435-1440
10.1039/C7PP00216E