研究課題/領域番号 |
16K07726
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
永長 一茂 弘前大学, 地域戦略研究所, 准教授 (70401891)
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研究分担者 |
中井 雄治 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (10321788)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌予防 / 変異細胞除去 / 食品 / 細胞競合 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
癌はゲノムDNAへの変異蓄積に起因する疾患で、異常増殖能と転移能を併せ持つ癌細胞の出現により発症する。DNAの変異した細胞(以下、変異細胞)は何らかの理由で隣接した細胞との協調性が失われ、組織から取り除かれる。除去機構が完全に解明されているわけではないが、遺伝子変異による細胞の「ちょっとした性質の変化」を周囲の細胞が感知し、除去が進むと考えられる。本研究は、癌予防食品の分野に「放置したままにしておくと癌細胞へと分化する恐れのある変異細胞の除去」といった視点を新たに加えることを目指したものであり、その第一歩として、変異細胞の除去を促進する食品成分を明らかにすることを目的とする。 前年度までに、変異細胞の除去を促進する4種類の食品素材A、B、CおよびDを見出している。前年度はA、Bについて、癌予防効果に関する報告が多いポリフェノール類の抽出を念頭に、両者を80%エタノールで分画し、両画分の活性を調べた。不溶性画分にのみ活性が見出された活性はポリフェノール以外の成分が持つ可能性が高まった。本年度は、CおよびDに関する実験を行った。Cに含まれる主要なポリフェノールCa、Cb、Cc、およびCd、主要ビタミンCvを入手し、それぞれについて変異細胞除去促進効果の解析を開始した。また、Dについては類似する食品素材の解析が全く行われていなかったので、類似食品素材Eについても変異細胞除去促進効果の解析を開始した。それに先立ち、Eを含む延べ40種類以上の食品素材および食品成分について毒性試験を行い、本研究に利用可能な摂食条件を決定した。なお、本年度末までにCa、Cb、Cc、Cd、CvおよびEについての変異細胞除去促進効果の解析が終了しておらず、結論は次年度に持ち越された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に変異細胞除去促進活性が見出された食品素材CおよびDについて、その性質を知るための解析を開始できた点は順調に進展しているといえるものの、成分特定に至る実験が終了しておらず、研究課題が遅れていると言わざるを得ない。 一方、延べ40種類以上の食品素材および食品成分の毒性試験を既に終え、本研究に利用可能な摂食条件を決定した。以降の研究課題の進展を加速させることが期待できる。 本年度に所属機関の組織再編があり、研究代表者の所属部局も再編された。それに伴うその他の業務の増加などがあり、研究全体に渡り研究の進捗に遅延が生じた。特に、翅原基を細胞レベルに分散して変異細胞の割合を機械的に数える手法の確立に遅延が生じた。 以上を踏まえ、「(3)やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗状況がやや遅れた最大の理由は、溶媒分画法による活性成分単離の試みである。そこで、食品素材の特徴にあわせて活性本体の絞込み法を選ぶといった研究推進方策をとることにした。具体的には、溶媒分画法による活性単離、活性が期待される食品成分の直接入手、類似食品との比較、の使い分けである。同時に、現在準備段階にある培養細胞を用いた実験、および翅原基を細胞レベルに分散して変異細胞の割合を機械的に数える手法の確立を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 培養細胞を用いた実験、および翅原基を細胞レベルに分散して変異細胞の割合を機械的に数える手法の確立を平成31年に行うことにしたため。
利用計画: 次年度使用額3,090,854円のうち、約250万円を実験補助員への人件費および細胞計測装置に充て、残額を物品費や旅費とする。
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