研究課題/領域番号 |
16K07730
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研究機関 | 尚絅学院大学 |
研究代表者 |
木村 ふみ子 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (50321980)
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研究分担者 |
宮澤 陽夫 東北大学, 農学研究科, 教授 (20157639)
仲川 清隆 東北大学, 農学研究科, 教授 (80361145)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ラット / 胎盤 / ドコサヘキサエン酸 / 多価不飽和脂肪酸 / 周産期 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本人のn-3系脂肪酸の摂取状況の把握と、不足した場合の影響を、胎盤および母体血・臍帯血赤血球膜の脂肪酸組成と、出生パラメータおよび食事調査といった疫学データを用いた多変量解析により検討を行うとともに、解析結果に得られた仮説を元に、動物試験を行い、胎児へのn-3系脂肪酸の供給量を調節する因子について明らかにすることを目的とする。 平成28年度は疫学データの解析と、胎盤脂肪酸組成の詳細分析を行った。疫学データの解析ではこれまで胎盤脂肪酸組成を測定してきた、妊娠前期に「子供の健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に登録し、2012年11月から2014年5月の間に出産した宮城県気仙沼地域と石巻地域在住の健康な日本人妊娠女性について、母体血・臍帯血赤血球の脂肪酸組成と母子の出生パラメータ(母親年齢、妊娠前BMI、妊娠期間中の体重増、分娩回数、喫煙習慣、児の出生体重、頭囲、胸囲、在胎日数、性別、胎盤重量、胎盤の肉眼的異常の有無など)を収集して解析を行った。この結果、胎盤と臍帯血赤血球膜に含まれる脂肪酸が出生パラメータに同様の影響を与えることを示唆する結果が得られており、胎盤は胎児に移行した脂肪酸を評価する生体試料として有用であると考えられた。 また、これまでに報告している母胎側と胎児側の脂肪酸組成比の違い(Ymazaki I, et al, J Oleo Sci, 64:905, 2015)について、検体数を増やし測定を行った。胎盤採取部位により脂肪酸組成は異なるものの、血液などの他の組織との関係に大きな違いはみられず、この採取部位による違いは、絨毛や基底膜の比率など構造の違いによると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に目標としていた胎盤脂肪酸と出生パラメータとの関係性の解析と胎盤採取部位による脂肪酸組成の違いについては完了しており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
H28年に測定した80検体の胎盤の母体側、胎児側について、存在比・母胎側/胎児側の差の大きさ・母胎側/胎児側間の相関係数に代謝上の位置づけを加味して、それぞれの脂肪酸の特徴を明らかにする。特に、存在比が大きく、生化学的に重要役割をもつDHA、アラキドン酸、オレイン酸、リノール酸、n-3系脂肪酸の欠乏指標のn-6ドコサテトラエン酸について、詳細な解析を行う。また、ヒトを対象にした観察研究で因果関係を検証することは困難であるので、妊娠ラットを用い、胎盤を通した母から子への必須脂肪酸の移行機構を明らかにするための検討を行う。まずは、ラットにおける胎児のDHA移行・蓄積が活発になる妊娠日齢を明らかにするため、妊娠後期における母体血、母体肝臓、胎盤および胎児肝臓の脂肪酸組成の経時変化・遺伝子発現変化を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、胎盤の脂肪酸組成分析が順調に進まなかった場合に、空いている時間に29年度以降に実施予定の動物実験で行う予定の遺伝子発現解析について検量線の作成等、予備的な試験を行う予定で、これに必要なキット等の消耗品を計上していた。しかし、脂肪酸組成分析が順調に進んだため、遺伝子発現解析関係の消耗品の購入は平成28年度予算では行わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
上述のとおり、遺伝子発現解析に必要なキット類および消耗品の購入を平成29年以降に行う予定である。
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