研究課題
本研究では、疫学的手法と動物試験の両面から、周産期における脂肪酸代謝・輸送の検討を行い、日本人に適した周産期の脂質栄養を明らかにすることを最終目的とする。平成29年度までの研究では、ヒト胎盤の母体面と胎児面の比較を行い、各脂肪酸の組成比は有意に異なるが、同じ脂肪酸同士は高い相関関係をもつことを明らかにした。さらに、胎盤と母体血・臍帯血赤血球脂肪酸組成比を比較した場合、多価不飽和脂肪酸において、ある程度の相関関係が見られ、胎盤採取部位 (母胎面・胎児面)の違いは、その相関関係の現れ方の傾向に、顕著な影響を与えなかった。胎盤を介した母親から子への選択的輸送を明らかにするには、妊娠後期の母胎および胎児の脂肪酸組成の経時変化と遺伝子発現変化の知見が必要となるため、平成30年は動物試験を実施した。すなわち、市販固形食摂取妊妊娠SDラット(9週齢)について、妊娠15、17、20、21日目の母体の血漿、肝臓、胎盤および胎児肝臓の脂肪酸組成解析を実施した。その結果、母体肝臓、母体血漿、胎盤のDHA値は、妊娠17日目と20日目の間で大幅に増加し、20日目から21日目にかけては増加が見られなかった。一方、胎児肝臓では特に20日目から21日目にかけてDHA値の大幅な増加が観察された。この結果は妊娠20日目以降のラット胎児のDHA生合成能が胎児肝臓の脂肪酸組成に影響する可能性を示している。また、昨年度選定した、周産期ラットの肝臓・胎盤での多価不飽和脂肪酸の代謝に関する遺伝子について発現量解析を実施した。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Prostaglandins, Leukotrienes and Essential Fatty Acids
巻: - ページ: -
https://doi.org/10.1016/j.plefa.2019.04.004