これまで我々は、食餌性タンパク質を摂取した際に腸管で生成するペプチドの中から抗ストレス作用を示す新規ペプチドを見出すことを目的とし、様々な食餌性タンパク質の分解物の抗ストレス作用を調べた。抗ストレス作用を示した分解物を分画し、活性ペプチド画分を絞り込み、最終的に活性ペプチドを同定する従来法を用いてきた。昨年度までに、魚肉タンパク質や枝豆など5種類の分解物を胃内投与したマウスにおいて、動物行動学的手法である強制水泳試験を用いて、うつ様行動が減少することを見出した。in situ門脈灌流システムを用いてタンパク質摂取時に実際に吸収される消化吸収ペプチドのアミノ酸配列をLCMSMSで同定し、それらの合成ペプチドのうつ様行動に対する影響を調べる方法を試みた。門脈灌流液のLCMSMS解析による消化吸収ペプチド同定法を確立し、魚肉タンパク質を胃内投与した時に回収した門脈灌流液に含まれる消化吸収ペプチドを2つ同定した。そこで、本年度、それらのペプチドを経口投与し、うつ様行動に対する効果を調べたところ、いずれも抗うつ作用を示さなかった。魚肉タンパク質の消化吸収ペプチドを同定したが、抗うつペプチドの同定には至らなかった。次に、我々は、コラーゲン分解物が抗うつ作用を示すことを見出した。また、コラーゲン由来の消化吸収ペプチドであるPro-HypおよびHyp-Glyを経口投与したところ、Pro-Hyp投与により抗うつ作用を示したが、Hyp-Glyによるうつ様行動の変化は見られないことを明らかにした。本研究により、腸管吸収されるコラーゲン由来ジペプチドの中から新規な抗うつ活性を示すペプチドを見出すことができた。今後は、コラーゲン由来ペプチドの抗うつ作用メカニズムを生理学や生化学の観点から明らかにすべきと考えている。
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