研究課題/領域番号 |
16K07733
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
都築 巧 京都大学, 農学研究科, 助教 (50283651)
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研究分担者 |
井上 和生 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80213148)
山崎 正幸 龍谷大学, 農学部, 准教授 (80397562)
真鍋 祐樹 京都大学, 農学研究科, 助教 (20730104)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | クラスBスカベンジャー受容体 / 長鎖脂肪酸 / 酸化型リポタンパク質 / 酸化型リン脂質 / 脂肪族アルデヒド / 嗅上皮 / CD36 / SR-BI |
研究実績の概要 |
我々はこれまでにCD36 (Cluster of Differentiation 36) が長鎖脂肪酸と相互作用(結合)する、マウスなどの哺乳動物の味蕾および嗅細胞に発現する、マウスが長鎖脂肪酸等を摂取した際、それらの感知のために一翼を担うという証拠を得ている。本研究では、食品等に含まれる脂肪酸関連物質からCD36の新規リガンドの探索、長鎖脂肪酸等とCD36結合(特性)についてのさらなる解析、模擬CD36と脂質リガンド複合体の結晶化とX線結晶構造解析、CD36と同じクラスBスカベンジャー受容体ファミリーに属するSR-BI (Scavenger Receptor Class B Member I)の嗅組織発現解析、SR-BIと長鎖脂肪酸等の結合解析、を行う。すなわちクラスBスカベンジャー受容体を介した長鎖脂肪酸およびその関連物質の感知識別機構に関する分子基盤を明らかにすることを目的とする。平成28年度は以下の3点について明らかにした。(1)我々は蛍光標識化酸化型低密度リポタンパク質(oxLDL)を基準リガンド、CD36のoxLDL/酸化型リン脂質(oxPL)結合部位と同一配列を包含する20アミノ酸残基程度の化学合成ペプチド(b3S-CD36(150-168))を人工模擬受容体とするCD36リガンド結合評価系を確立している。本評価系により、鰹節の匂い成分、Z,Z-4,7-tridecadienalにCD36リガンド活性があることを明らかにした。(2) グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合体としての模擬CD36(GST-CD36)とoxPLが直接的に結合すること、すなわち両者が複合体を形成していることを明らかにした。(3) マウス嗅組織でSR-BIが発現していることを、逆転写―ポリメラーゼ鎖反応、ウエスタンブロッティング、免疫染色により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に記述した平成28年度の研究計画は全て実施した。しかしながら、GST-CD36と長鎖脂肪酸が直接的に結合していることを支持する結果は得られなかった。さらなる条件検討が必要であると考えている。また、GST-CD36とoxPL複合体の結晶化には至らなかった。これについてはGST-CD36の更新が必要であると考えている。一方、その他の研究計画については全て目的とする結果が得られている(研究実績の概要の項参照)。
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今後の研究の推進方策 |
(1)化学合成された模擬受容体を用いたSR-BIと長鎖脂肪酸等の相互作用の解析。SR-BIと長鎖脂肪酸の相互作用の検証のためb3S-CD36(150-168)と同等の性能をもつ人工模擬SR-BIを作出する。マウスおよびヒトSR-BIのoxLDL/oxPL結合部位およびその周辺を包含した形容で数種類のオリゴペプチドを化学合成、その中から基準リガンドの解離定数が2 microgram/ml程度のものが得られれば、それを用いて長鎖脂肪酸等による基準リガンドの結合阻害を調査する。(2) SR―BIが嗅組織に発現していることをさらに確認する目的でin situ hybridization 分析を行う。(3)新規CD36リガンドのさらなる検索 (時間的余裕があれば新規リガンド候補が実際に動物においてCD36を介した機構で感知されているかをマウスを用いた行動学的試験により調査する)(4)長鎖脂肪酸とGST-CD36の直接的結合の検証 (5) GST-CD36の更新とGST-CD36-酸化型リン脂質複合体の結晶化を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は平成28年10月に追加採択の通知があったものであり、半年未満で一年度分の経費を使用することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
化学合成人工模擬SR-BIを一種類作出するために10万円程度の経費が必要である。それらを数種類作出するための経費に充当させる予定である。
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