研究課題/領域番号 |
16K07734
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
後藤 剛 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10550311)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脂肪組織 / 肥満 / インスリン抵抗性 / 食品成分 / 核内受容体 / PPARalpha / FGF21 |
研究実績の概要 |
前年度に引続き、核内受容体PPARalpha活性化と褐色脂肪細胞機能の関連性について検討を行った。PPARalpha活性化剤であるfenofibrate (Feno)投与によるFGF21依存的な白色脂肪組織の褐色化は高脂肪食誘導性のインスリン抵抗性を改善させた。Feno投与により、代表的なインスリン感受性組織のうち、特に白色脂肪組織のインスリン感受性亢進が認められ、全身のインスリン抵抗性改善に寄与しているものと考えられた。FGF21感受性試験により、主要なインスリン感受性組織の中で、白色脂肪組織が最も高いFGF21感受性を示したことから、FGF21の主要な標的組織は白色脂肪組織であることが示唆された。また、FGF21感受性の組織間差の一部にはFGF21受容体の発現量差が寄与しているものと考えられた。前年度の結果と合わせ、PPARalpha活性化剤は、肝臓においてFGF21の発現・分泌を促進し、FGF21が脂肪組織において褐色脂肪組織機能を亢進させることにより、白色脂肪組織のインスリン感受性を亢進させることが示唆された。 上記のようにPPARalpha活性化による褐色脂肪組織亢進作用が認められたため、食品由来のPPARalpha活性化剤摂取時の褐色脂肪組織機能の活性化について検討を行った。その結果、食品由来PPARalpha活性化因子であるphytol (POH)摂取により、褐色脂肪組織機能が亢進することを見出した。POH摂取マウスでは、肥満の進展が抑制され、肥満誘導性の糖代謝・脂質代謝異常の改善が認められた。以上より、POHはPPARalpha活性化を誘導した結果、褐色脂肪組織機能亢進を介したエネルギー消費の亢進を惹起し、肥満や肥満に伴う代謝異常症の発症を抑制することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核内受容体PPARalpha活性化による褐色脂肪脂肪組織機能亢進機構の一端について明らかにすることが出来た。さらに、食品由来成分であるPOH摂取がPPARalphaの活性化を介して褐色脂肪細胞機能を亢進させ、肥満や肥満に伴う代謝異常症の発症に対し、抑制的に機能することを明らかにした。 以上より、本研究の研究課題である以下の2つの課題について、順調な進展が認められたため。 (1)核内受容体と褐色脂肪細胞機能の関連性の解明 (2)核内受容体を介した食品成分による褐色脂肪細胞機能制御機構の解明
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度より取組んでいる褐色脂肪細胞機能の簡便評価系の構築について、クローニングにより得られた高い発光強度を示すレポーター細胞の有用性について詳細な検討を続ける予定である。本細胞を用いた予備的な検討では、陽性対照に対して強い発光強度を示したため、種々の条件検討を行い、評価条件の最適化を行った後、褐色脂肪組織機能を制御可能な食品由来成分や核内受容体をはじめとする新規遺伝子についてスクリーニングを行う予定である。 核内受容体と褐色脂肪細胞機能の関連性の解明については、fenofibrateの組織分布について検討したところ、高い肝臓への集積性が認められ、脂肪組織への集積は非常に限定されたものであった。そのため、脂肪細胞における直接的なPPARalpha活性化が褐色脂肪細胞機能に及ぼす影響については未解明な部分が多く残されている。そこで、脂肪細胞における直接的なPPARalpha活性化が褐色脂肪細胞機能に与える影響について明らかにしていきたい。また、培養細胞を用いて、PPARalpha以外の核内受容体が褐色脂肪細胞機能に与える影響についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】 今年度は動物実験について集中的に実験を行い、培養細胞実験関連の支出を当初想定していたよりも低額に抑えることが出来たため。 【使用計画】 最終年度には培養細胞を用いた実験を多く行っていく予定であり、多額な消耗品を要することが予想される。次年度使用額についてはこれらの消耗品に充てていきたいと考えている。
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