研究課題/領域番号 |
16K07736
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
渡辺 文雄 鳥取大学, 農学部, 教授 (30210941)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ビタミンB12 / 疑似ビタミンB12 / 食品添加物 / 精密分析 / 加工食品 / 代謝障害 / 欠乏症 |
研究実績の概要 |
ビタミンB12(B12)は,深紅の水溶性ビタミンであり,我国の食事摂取基準では推奨量2.4μg/日と極めて微量で有効である.B12は微生物のみで生合成され,自然界の食物連鎖により,動物組織へと蓄積されるため,動物性食品がB12の良い供給源となっている.これまでに我国の主要なB12供給源である食品に含まれるB12化合物をLC-MS/MSで精密に分析した結果,微生物が生産したB12構造類似体(疑似B12あるいは天然型B12同族体)が食品に多量に含まれていることを明らかにし,疑似B12の生体に及ぼす影響を解明した.この研究過程で加工食品に未同定な(天然には存在しない質量を有する)B12化合物が多種類含まれていることを見いだし,これら非天然型B12同族体の一種類をB12[c-ラクトン]と同定した.B12[c-ラクトン]は広く利用されている有機塩素系抗菌剤クロラミンTとB12が反応して生成することを世界ではじめて明らかにした.しかし,加工食品に含まれる非天然型B12同族体の生体に及ぼす影響や細胞内代謝については不明であり,日常的に非天然型B12同族体を摂取することがB12の吸収を妨げ,細胞内でB12の代謝系を阻害することになれば,B12欠乏性疾患(神経障害)の発症が危惧される.そこで,食品添加物とB12の反応生成物の種類や食品に含まれる非天然型B12同族体を分析すると共にB12依存性酵素などに及ぼす影響を分子レベルで検討することで,非天然型 B12同族体の生体に及ぼす影響を解明する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
指定添加物リスト(日本食品化学研究振興財団)に記載されている449種から香料と着色料,脂溶性ビタミンを除外し,動物性食品に使用されている添加物11種を選択してビタミンB12(B12)との反応性を検討した.各種添加物を使用基準最大濃度に調製し,B12(終濃度10μM)と混合して,反応直後から経時的に紫外可視吸光スペクトルの変化を測定した.反応液はSep-Pak C18カラムを用いて濃縮・溶出後,TLC分析を行った.またHPLCを用いて反応物の精製を行い,紫外可視吸光スペクトル分析,E.coli 215によるバイオオートグラム分析,LC-MS/MS分析により反応物の同定を行った.紫外可視吸光スペクトル分析・TLC分析・HPLC分析の結果より,B12との反応性が顕著に観察された食品添加物は次亜塩素酸水,微酸性電解水,次亜硫酸ナトリウム,ピロ亜硫酸ナトリウム,亜硫酸ナトリウム,亜硝酸ナトリウムであった.この中で有機塩素系の添加物(次亜塩素酸水と微酸性電解水)はB12の構造に著しく影響を及ぼし,複数の不安定な反応生成物が生成したために,それらを単離することができなかった.その他の食品添加物の中でB12の構造を最も変化させた添加物はピロ亜硫酸ナトリウムであった.B12とピロ亜硫酸ナトリウムの反応液をHPLC 分析した結果,反応後約24時間で新たなB12化合物が生成していた.反応生成物をLC-MS/MS分析で同定した結果,ヒドロキソB12が生成していることが明らかとなった.また,実際にエビ(生)に変色防止剤として基準値のピロ亜硫酸ナトリウムを処理した結果,エビの黒変は防止されたが,B12含量の顕著な減少が認められた.
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今後の研究の推進方策 |
1.有機塩素系の食品添加物(次亜塩素酸水と微酸性電解水)とビタミンB12(B12)の主要な反応生成物を安定化させ単離し,機器分析などにより構造を決定する.また,有機塩素系抗菌剤クロラミンTとB12が反応して生成するB12[c-ラクトン]と共に本反応生成物を大量に調製して,次年度に実施予定である細胞試験の準備を行う. 2.酸化防止剤(還元剤)のピロ亜硫酸ナトリウムはB12を還元的に脱シアノ化することでヒドロキソB12を生成したと推測されるが,その詳細な反応機構を解明する.また,生成物であるヒドロキソB12は生理活性を有しているにも関わらず,食品(エビ)に処理した時に顕著なB12含量の減少が観察された.この原因を解明するためにエビ(生)以外の食品にピロ亜硫酸ナトリウムを処理してB12含量の変化や反応生成物の単離・同定を行う.
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