研究課題/領域番号 |
16K07740
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
永尾 晃治 佐賀大学, 農学部, 教授 (10336109)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / コレステロール逆転送系 / 食環境 |
研究実績の概要 |
メタボリックシンドローム発症時のコレステロール逆転送系低下に関して、In vitroおよびin vivo実験系を用いて、生体側のバイオマーカー応答の検証と改善作用を持つ食事因子の検索・検討を行った。従来からトリグリセリド・コレステロール代謝系に影響しうる食事成分として大豆たんぱく質中のの7Sグロブリンが知られているが、高いアミノ酸配列相同性を持つ8Sグロブリン(緑豆たんぱく質中に89%含有)を用いたin vivo実験系により、肥満ラットにおいて低下したHDL-C/Total-Cを改善できることが明らかとなった。緑豆たんぱく質がコレステロール代謝系に及ぼす影響を検証したところ、コレステロール合成及び吸収に対して抑制的に働くことが示された。今後、逆転送系への直接的な影響や活性責任ペプチド配列の検討などを進めていく予定である。さらに、ヒト肝臓由来HepG2細胞を用いたin vitro実験系により、HDL-Cを低下させる事が示唆されているエライジン酸を含む炭素数18モノエン脂肪酸位置異性体13種が、リポタンパク質代謝のバイオマーカーであるApolipoprotein-A1および-Bの分泌に及ぼす影響について検討した。その結果、悪玉リポタンパク質分泌亢進作用においてエライジン酸よりも強い影響を及ぼす位置異性体を見出した。今後は、その位置異性体を大量合成してin vivoでのコレステロール逆転送系への影響を検討する予定である。よって本研究により、メタボリックシンドローム発症時のコレステロール逆転送系低下を改善する新たな食品成分を見出し、また逆に悪化させる脂質成分を発見することができたことで、これらが引き起こす代謝変動を手がかりに病態発症機序解明への糸口になると期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度の成果として、幾つかの新知見と、雑誌論文4件、著書1件、招待講演2件、学会発表5件の成果が得られたから。
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今後の研究の推進方策 |
LDL-C管理のみで解消できない心血管疾患の残存リスクには、遺伝的並びに環境的因子が単独もしくは複合して作用していることが想定されるが、メタボリックシンドローム発症時のHDL-CHOL低下機序の責任分子・制御機構を解明することが出来れば、HDL代謝に対する食環境の評価系選択を容易にするのみに留まらず、未知の疾患関連遺伝子の発見や多臓器間代謝ネットワークの解明に寄与する可能性がある。28年度の研究により、メタボリックシンドローム発症時のコレステロール逆転送系低下に関して改善もしくは増悪化させる食事因子を見出すことが出来た。29年度はin vitroでの現象をin vivoで確認すること、およびトランスクリプトーム解析等を用いて、肝臓(脂質代謝の中心臓器)と脂肪組織(メタボリックシンドローム発症時のシグナル発信臓器)間での臓器間クロストークの詳細を検討する。さらには、臓器間クロストークを誘導するアディポサイトカインおよび臓器間クロストークに応答する遺伝 子群をインデューサー及びバイオマーカーとすることで、新規スクリーニング系の構築を行い、食品由来機能性成分の効率的な探索を目指す。
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