研究課題/領域番号 |
16K07742
|
研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
高橋 正和 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (80315837)
|
研究分担者 |
片野 肇 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (50264685)
神戸 大朋 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90303875)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ソヤサポニン / 簡便精製法 / 亜鉛トランスポーター / ZIP4 / ZNT-1 |
研究実績の概要 |
これまでに大豆サポニンBbには多様な生理活性が示されているが,マイナーな大豆サポニン分子種の生理活性については,ほとんど報告がない.そこで本研究ではまず,大豆全粒粉末(タンパク質35%,脂質20%,糖質20%などを含む)より,メタノール抽出の後,ホウ砂を用いた選択的沈殿法と1-オクタノール洗浄を組合わせ,大豆サポニンBb以外には1~2種の大豆サポニンしか含まない標品を簡単に得る方法を開発した.さらに昨年度は新たな手法として,大豆全粒粉末にエタノールを加えてマイクロ波過熱を加えることによって,ほぼ大豆サポニンBb以外には1種の化合物(質量分析(m/z = 913.5; [M+H+])から大豆サポニンBcと推定)しか含まない標品を得る,非常に簡便な手法を開発した.BbとBcの最終分離は逆相HPLCで行い,大豆全粒粉末から2.3mg のBbと1.7 mgのBcを単離した.大豆サポニンBbは亜鉛トランスポーターZIP4(腸管吸収に必須)の誘導活性を示すことから,大豆サポニンBcについて検討したところ,ほぼ同等のZIP4誘導活性を示すことが判明した.なお,大豆サポニン以外の天然化合物に関しても溶解度を利用した簡便精製法の確立を検討した. ところで,従来のin vitro 活性評価系には,肝臓系細胞株を用いなければならない欠点があった(理由:腸管系細胞株ではZIP4が発現していない)ため,別の亜鉛トランスポーターZNT-1に対する抗体を構築した.この抗ZNT-1抗体は,腸管系細胞株であるCaco-2をはじめ,ヒトやイヌといったゲッ歯類以外の細胞株に内在的に発現するZNT-1をきれいに検出することが示された.そこでCaco-2細胞を用いて粗精製大豆サポニンの効果を解析した.しかし,内在性の発現レベルが高いため,有意な差を検出するには,内在性レベルを落とす改良が必要であることが判明した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大豆全粒粉末からの大豆サポニンBbの直接精製法の確立について,マイクロ波法を用いた新たな手法開発に成功し,精製標品を得た.同様の精製を繰り返すことで精製標品を大豆全粒粉末という安価な標品から継続的に得られる.またマイナーな大豆サポニンBcの精製が可能となり,ZIP4誘導活性をHepa細胞系にて証明することに成功した.今回開発したマイクロ波法は,非常に簡便であり,これまでの溶媒沈殿法よりも簡便である.BbとBc以外はマイクロ波処理でほとんど分解するため,これらが構造的に安定な理由があるものと考えられる.大量調製がさらに簡便になったため,Hepa細胞系以外でもBcのようなマイナー分子の活性評価が可能となった. これまでに開発した手法を用いて大量精製に着手したが,詳細解析に必要な化合物量が当初見込みより多くなり,追加精製中である.また,小腸オルガノイド培養系へのマイクロインジェクションについても検討したが,確実に内腔へ注入するためには熟練が必要と分かり改良中である.一方,これまで使用してきたHepa細胞は,肝臓系細胞であるため,食成分が直接接触する腸管培養細胞株(Caco-2)などを用いた評価を可能にするため,抗ZNT-1抗体を樹立した.抗ZNT-1抗体を用いて大豆サポニンの活性評価を試みたが,内在性の発現レベルが高いので差が認めにくく,有意な差を検出するには,内在性レベルを落とす改良が必要であることが判明した. 以上,精製系の構築は順調であるが,オルガノイド培養系へのインジェクションと新規抗体を用いた評価に関して課題があるため,総合的には,「やや遅れている」とした.
|
今後の研究の推進方策 |
開発したホウ砂による選択的沈殿法やマイクロ波法を用いて,効率よく大豆サポニンBbやマイナーサポニン分子の大量調製を行う.そして,従来の肝臓系細胞(Hepa細胞)を用いたZIP4発現誘導活性について解析を続行する.さらに新しく樹立した抗ZNT-1抗体を用いた腸管系細胞(Caco-2細胞など)における亜鉛トランスポーターに対する作用を評価する. さらにマウス腸管細胞の三次元培養系(オルガノイド培養系)において,オルガノイド内腔側(消化管側)へ各種サポニン分子をマイクロインジェクションして機能評価を行う.亜鉛取込上昇の確認には特異的蛍光プローブ(細胞膜透過型)を用いる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) Hepa細胞におけるBcのZIP4誘導活性は確認したが,精製化合物の大量調製に手間取ったため,機能解析は全体に遅れている.このため年度末に無理に予算執行せず,翌年の追込みに充てることにした. (使用計画) 機能成分の大量調製・機能評価の費用に充てる.
|