研究実績の概要 |
これまでにホウ酸ナトリウム水溶液を用いた選択的沈殿法を駆使して、大豆全粒粉末のメタノール抽出物からB型サポニン(Bb, Bc)ならびにそのDDMP型(βg,,βaなど)の簡便精製が可能となった。さらにLC/MS解析から、単離・同定済みピークの前後に検出されるマイナーなピークは、他の大豆サポニン分子種であることが確認された。したがってホウ酸ナトリウム水溶液による選択的沈殿法は、大豆サポニン類の精製に威力を発揮し、cis-diol構造を持つほかの大豆サポニン分子種の単離も容易にできる簡便迅速かつ安価な精製法であることが示唆された。また、今後このホウ酸ナトリウム水溶液を用いることで、他の生理活性化合物の精製への利用も期待された。 ところで、当初大豆サポニン粗精製標品(市販品)にZIP4発現増強活性を見出した際、大豆イソフラボン粗精製標品(市販品)にも同様のZIP4発現増強活性を見出していた。そこで、大豆イソフラボン類がZIP4発現増強活性を示す可能性を確認しておくため、イソフラボン類の主要なアグリコン(ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン)ならびに配糖体標品(ダイジン、マロニルダイジンなど)について検討した。しかし、有意な活性は認められず、大豆イソフラボン粗精製標品の活性は、微量に含まれる大豆サポニンによるものと結論付けられた。また、大豆サポニンは疎水性アグリコンと親水性糖鎖からなる両親媒性構造が特徴であり、糖鎖を削ると失活することをこれまでに確認している。そこで同様の構造を持つ化合物がZIP4発現増強を示すか検討するため、数種の市販サポニン類(例:サイコサポニン)のZIP4発現増強活性を検討したが、有意な活性は認められなかった。これらの結果から、大豆サポニン固有の性質がZIP4増強活性を発揮させているものと考えられたが、その詳細までは解明できなかった。
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