初年度はγ-リノレン酸(GLA)高含有油脂がセサミンの肝臓β酸化活性を増強することを示した。さらに、高脂血症モデルであるApoE欠損マウスを用い、GLA高含有油脂が肝臓の脂肪酸酸化活性を顕著に増加させ、有効に血清脂質濃度を低下させることを示した。以上の結果より、ラットとマウスではGLA高含有油脂に対する応答性がかなり異なることが予想され、29年度と30年度にかけ汎用系統であるICRマウスとSprague Dawley(SD)ラットを用い、互いに脂肪酸組成の異なるパーム油(飽和脂肪)、サフラワー油(リノール酸)、GLA油、シソ油(α-リノレン酸)および魚油(EPAとDHA)が肝臓の脂肪酸代謝に与える影響の違いを調べた。その結果、ICRマウスではSDラットと比較し、GLA高含有油脂により肝臓β酸化活性が顕著に増加し、さらに増加はペルオキシゾーム酵素でミトコンドリア酵素よりはるかに大きいことが示された。また、魚油もマウスとラットでβ酸化を増加させるが、やはり増加はマウスでより顕著であった。シソ油もβ酸化を増加させるが、増加の程度にマウスとラットで差はなかった。このように油脂に対する代謝応答性に種差があることは明確であり、動物実験を行っていく上での極めて重要な基礎知見を提供した。さらに、30年度は肥満・糖尿病モデルであるKK-Ayマウスに加えて汎用系統ICRマウスを用い共役リノール酸(CLA)とGLA高含有油脂あるいは魚油を組み合わせた場合の脂質代謝に与える影響の違いについて解析した。KK-Ayマウスを用いた実験ではCLAによる摂食抑制が強く見られ、油脂との相互作用による生理活性の違いの明確な解析は困難であった。しかし、ICRマウスではCLAが脂肪組織重量や肝臓脂質濃度さらに脂肪酸代謝系酵素の活性とmRNAに与える影響が共存する油脂の種類で大きく変化することが示された。
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