研究課題/領域番号 |
16K07745
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
川上 浩 共立女子大学, 家政学部, 教授 (90458860)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鉄代謝 |
研究実績の概要 |
消化管粘膜細胞の鉄吸収機構におけるラクトフェリン(以下、LFと略す)の関与を明らかにするために、LF結合成分とそれらを含まない高度精製LFを用いて実験を行った。ヒト肝細胞株HepG2細胞を培養したマルチウエルプレート内に、ヒト腸管上皮細胞株Caco-2細胞をMF膜上で培養したインサートカップを入れ、インサート内が腸管腔側で、マルチウエル内が血流側となる腸管上皮-肝細胞共培養系を作成した。Caco-2細胞がコンフルエントになった後、インサート側の培養液にクエン酸第二鉄を添加して3~5日間培養した。その際、LF結合成分および高度精製LFもインサート側あるいはマルチウエル側に添加した。回収したCaco-2細胞をビーズ入りマイクロチューブ内で破砕し、フェリチン合成量を抗フェリチン抗体を用いたサンドウィッチELISAで測定した。また、マルチウエル内の培養液を回収し、Caco-2細胞に取り込まれた後にマルチウエル側へ移行した鉄の量を測定するとともに、HepG2細胞が産生したヘプシジンの量を、抗ヘプシジン抗体によるサンドウィッチELISAで測定した。さらに、Caco-2細胞膜画分をSDS電気泳動に供し、ウエスタンブロッティング後にフェロポーチンを免疫染色で検出した。リン酸塩の存在下でクエン酸第二鉄をインサート内に添加すると、リン酸塩の濃度が高まるにつれてCaco-2細胞のフェリチン合成量が低下した。しかしながら、高度精製LFが共存するとフェリチン合成量の低下は抑制された。Caco-2細胞単独培養の場合、マルチウエル側に移行した鉄の量は増加し続けたが、HepG2細胞との共培養では、鉄の移行量が飽和状態に達した。HepG2細胞によるヘプシジン産生量の変化から、Caco-2細胞内のフェリチンによって保持された鉄のマルチウエル側への移行は、ヘプシジンによって調節されていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HPLCシステムのオートサンプラを更新したのに伴い、過去の実験データとの整合性を確認しなければならなかったため、研究の推進に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
HPLCによる評価成分の分画作業と、動物細胞培養系による機能性評価の実験を同時並行で実施することによって、これまでの研究の遅れを挽回する。
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次年度使用額が生じた理由 |
機器の更新により、過去の実験データとの整合性を取らなければならなくなり、当初予定していた培養細胞実験系による機能性評価実験のうち、複数の実験を次年度に繰り越すことになったため、未使用予算が生じた。新年度では、研究の遅れを取り戻すため、当初予定していた培養細胞系の実験を同時並行で行うため、未使用分を繰り越して使用する予定である。
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