研究実績の概要 |
これまでに明らかにしてきたラクトフェリン(LF)結合成分中のすべてのペプチドを化学合成し、モノクローナル抗LF抗体を固定化したカラムで精製した高純度LFとの免疫調節活性の違いを比較した結果、いずれのペプチドにも活性が認められなかった。そこで、分子量8,000未満にターゲットを絞った分析条件で、LF結合成分に含まれるペプチドを網羅的に明らかにするため、LC-MS/MSショットガン法による解析を行った。ダイレクトフローnanoLCシステムEasy-nLC 1000に、トラップカラムAcclaim Pep Mapおよび分析カラムNANO HPLC CAPILLARY COLUMNを接続して分析した。移動相はA液0.1%ギ酸、B液0.1%ギ酸/アセトニトリルとし、流速 300nL/分で濃度勾配をかけて流し、質量分析計Q Exactive Plusで検出した。解析ソフトウェアはProteome Discoverer、検索エンジンはMascot、データベースはSwiss Protを用いた。その結果、LF結合成分には新たに352種類のペプチドが存在することが明らかとなった。これらペプチドの分子量は783~3,776の範囲にあり、現在まで公知になっていないペプチドも含まれていた。 マウスマクロファージRAW264.7およびヒト腸管上皮細胞Caco-2を、LPSおよびIFN-γで刺激して炎症性サイトカインと一酸化窒素(NO)を産生させ、高純度LFおよび各種ペプチドによる抗炎症作用を調べた。培養上清中の炎症性サイトカインを特異抗体によるELISAで測定した結果、複数のペプチドにTNF-α、IL-1βおよびIL-6の産生を抑制する活性がみられた。また、Museセルアナライザーを用いて、生細胞内部で産生されたNO量を測定したところ、NO産生を亢進するペプチドと抑制するペプチドの両方が確認できた。
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