研究課題/領域番号 |
16K07746
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
細野 崇 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80445741)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | アルツハイマー病 / 多価不飽和脂肪酸 / 高脂肪食 / 魚油 / ラード / 肥満 / インスリン抵抗性 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病は脳内でインスリンシグナルに異常があることから、3型糖尿病ともいわれている。しかし、脳内の病気であるアルツハイマー病と末梢組織において肥満・糖尿病が合併した場合、アルツハイマー病病態が重篤化するかは不明である。本研究はアルツハイマー病モデルマウスが肥満により肥満・糖尿病を発症することでアルツハイマー病病態が重篤化するか、食品成分により肥満・糖尿病を改善することでアルツハイマー病病態を予防可能か検討を行っている。 本年度は1.多価不飽和脂肪酸を多く含む魚油高脂肪食による食餌誘導性肥満の改善メカニズムの解明と、2.アルツハイマー病モデルマウスの認知機能障害を魚油含有食給餌により改善できるか検討した。1.について、魚油含有高脂肪食はラード含有高脂肪食と比べて顕著な体重増加の抑制が認められた。この際、長期飼育によりミトコンドリアの増加に伴う鼠径部白色脂肪組織の褐色化や体熱産生に関与する脱共役タンパク質1(Ucp1)の発現上昇が認められた。しかしながら、短期間の実験では鼠径部脂肪組織の褐色化やUcp1発現上昇は認められなかった。また、深部体温を測定したところ、魚油高脂肪食給餌マウスではラード含有高脂肪食と比べて明期の体温低下が認められた。これらのことから魚油高脂肪食による肥満改善メカニズムには、Ucp1の発現上昇による体熱産生亢進を介したものではないことが示唆された。2.について、ラード含有高脂肪食と魚油含有高脂肪食を給餌したアルツハイマー病モデルマウスの認知機能を評価するためY字迷路試験を実施した。魚油含有高脂肪食給餌マウスはラード含有高脂肪食給餌マウスよりも、短期記憶の指標である交替行動数を顕著に増加させ、認知機能の改善が認められた。現在、魚油による認知機能の改善メカニズムについて検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、魚油含有高脂肪食の肥満抑制メカニズムの解明を行った。深部体温測定系を確立し、魚油含有高脂肪食とラード含有高脂肪食での体温を比較し、魚油が体温上昇を介さずに抗肥満作用を示すことを見出した。また、アルツハイマー病モデルマウスを用いて魚油含有高脂肪食とラード含有高脂肪食での認知機能の解析を行い、一定の成果が得られた。以上の点から、当初の計画に対しておおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は以下のような検討を進めていく。 1.魚油高脂肪食がどのようなメカニズムで食事誘導性肥満を抑制するかについてさらに検討を続ける。 2.アルツハイマー病モデルマウスに魚油含有高脂肪食とラード含有高脂肪食を与えた際の病理学的解析を行い、魚油の摂取がアルツハイマー病病態を改善した原因を解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) アミロイドβの定量のためのELISAキットの購入が予定よりも少なく、消耗品の支出が少なかったため。 (使用計画) 平成29年度の繰越分は、アルツハイマー病モデルマウスの病理解析に伴うELISAキットや抗体の購入(消耗品費)に充てる。
|