研究課題/領域番号 |
16K07747
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 由香 (豊島由香) 日本医科大学, 先端医学研究所, 講師 (70516070)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タンパク質 / 4E-BP1 / 中性脂肪 / 肝臓 / eIF4G |
研究実績の概要 |
我々は低タンパク質栄養によって起こる肝臓中性脂肪蓄積に、肝臓における翻訳抑制因子4E-BP1の量的増加が必要であることを見出した。本研究は、低タンパク質栄養によって増加する肝臓4E-BP1が、肝臓に中性脂肪を蓄積させる機構の解明を目指す。平成28年度は、以下の検討をした。 (1)肝臓における4E-BP1過剰発現が脂質蓄積に及ぼす影響の解析 肝臓で4E-BP1量を人為的に増加させた際に、低タンパク質栄養状態と同様に、肝臓中性脂肪量が増加するか検討した。4E-BP1発現アデノウイルスを作製し、これをラット尾静脈より注入、感染させることで、4E-BP1をラット肝臓で特異的に強制発現させることに成功した。このラットの肝臓中性脂肪量を測定したところ、対照ラットと同等であった。したがって、肝臓で4E-BP1量を増加させただけでは、肝臓中性脂肪量は増えないことがわかった。 (2)低タンパク質栄養状態に応答して増加する肝臓4E-BP1を介した肝臓脂質蓄積機構の解明 低タンパク質栄養状態の肝臓において、4E-BP1と競合してeIF4Eと複合体を形成する、eIF4Gの動態について検討を加えた。検討の結果、低タンパク質食摂食ラットの肝臓では、eIF4G量が増加していた。また、低タンパク質食摂食による肝臓4E-BP1量の増加を抑制したラットの肝臓では、低タンパク質栄養による中性脂肪の蓄積が抑制されるのと同時に、eIF4G量の増加も抑えられていた。さらに、(1)で作製した、肝臓特異的に4E-BP1を強制発現させたラットの肝臓eIF4G量は、対照ラットと同等であった。以上の結果から、低タンパク質食栄養状態の肝臓では、4E-BP1量の増加と共にeIF4G量が増加することによって、脂質代謝を変動させ、脂質蓄積が促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、研究は進んでいる。 本年度の成果により、肝臓において、4E-BP1量を増加させただけでは、中性脂肪量は増えないことがわかった。さらに 低タンパク質食摂食によって肝臓4E-BP1量が増加するだけでなく、肝臓eIF4G量も増加することが分かった。他の結果も併せると、低タンパク質食栄養によって起こる肝臓脂質蓄積には、肝臓4E-BP1量の増加と共にeIF4G量の増加も寄与することが示唆された。したがって、一定の目標は達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画通りに進める予定である。 今後は、プロテオーム解析や放射性同位体を用いた代謝速度の測定などを行って、低タンパク質栄養状態の肝臓において、4E-BP1量増加を介して変動する糖・脂質代謝経路の同定を行う。そして、最終的に、低タンパク質栄養状態に応答して増加する肝臓4E-BP1がどのように肝臓の中性脂肪量を調節しているか明らかにする。
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