研究課題
【目的】我々はこれまでに、ヒト母乳及び唾液中に食品タンパク質が分泌型IgAとの免疫複合体(IgA-IC)を形成して存在することを報告し、マウスによる母乳哺育実験によって母親が摂取したタンパク質特異的に、乳児に経口免疫寛容が誘導されることを明らかにしてきた。そこで本研究では、1.マウスを用いて、母親の乳酸菌摂取により母乳中のIgA-IC産生が増強されるかどうかを明らかにする。2.現在の母乳中のアレルゲン、IgA、IgA免疫複合体の定量では、抗原の結合数を区別出来ず結果の理解が不十分であったため、抗ヒトIgAモノクローナル抗体を作製し、より詳細な解析法の構築を試みた。【方法・結果】1.昨年度、雌BALB/cマウスを交配し、試験群には1%乳酸菌添加卵白餌を、対照群には卵白餌を出産前後計8週間摂取させた後、搾乳した。母乳中OVA及びOM・IgA-ICを定量したところ、有意差はなかったものの対照群に比べて試験群でICが高い傾向にあることがわかった。今年度は個体数を増やして追加実験を行い再現性を確認すると同時に、乳酸菌を摂取した母親の母乳で育った乳児におけるアレルギー抑制効果を確認することができた。 2.抗ヒトIgAモノクローナル抗体4種の取得に成功し、まず免疫沈降法により遊離の抗原のみの定量法の確立をめざしたところ,分泌成分が妨害することが判明した。しかし、IgA1とIgA2を区別することが可能となった為、今後はサブクラスレベルでの解析を予定している。
2: おおむね順調に進展している
定年退職の年で、研究の遅れが懸念されたが、大学からの助成を受けて確保した補助員の活躍もあって、切りの良いところまで研究を進めることが出来た。現在論文の作成中である。
本研究課題のひとつとして、経口免疫寛容療法の経過観察法として免疫複合体解析を利用する計画が進行中である。昨年度から寛容誘導治療中の患者から唾液を回収中であるため、本年度はその解析を行なう。本年度は助成の最終年であるので、研究の収束に向けて補足実験を行うとともに、発展的解消を目的として昨年度得られた抗ヒトIgAモノクローナル抗体を用いて,サブクラスレベルでの免疫複合体の解析を行う。
次年度使用額が生じた理由:① 大学から補助員助成を受けることが出来たので,アルバイト費を節約できた。② 再就職先で新たに研究を開始することを予定していたので,少し節約した。使用計画:①計画の完遂に向けて邁進する。②成果の公開(学会・論文発表)に努める。
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Fish Pathology
巻: 53 ページ: 1-4
Allergologia et Immunopathologia
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Food Sci. Technol. Res
巻: 24 ページ: 621-625