【目的】 我々はこれまでに、ヒト母乳及び唾液中に食品タンパク質が分泌型IgAとの免疫複合体(IgA-IC)を形成して存在することを 報告し、マウスによる母乳哺育実験によって、母親が摂取したタンパク質特異的に、乳児に経口免疫寛容が誘導されることを明らかに してきた。本年度はヒト唾液を対象として、1.特異的経口免疫寛容誘導の治療経過に伴う、唾液中のIgA免疫複合体の解析、2.本研究遂行中に発見したIgA不完全欠損症の解析を行なった。
【方法・結果】 1.某病院小児科において行われている卵・乳・小麦特異的経口免疫寛容誘導治療中の患者唾液中の抗原特異的IgAならびにその免疫複合体の解析を行っている。除去期、誘導期、維持期に分けて採取中であり、まだ治療中の段階で寛解に至った患者がいないため結果は出ていない。個人差・ばらつきが大きく、患者・担当医との密接な協力関係が必須である。今後も患者数を増やして継続していく事になっている。2.IgA不完全欠損症の解析:本研究遂行中に他と比べて唾液中の総IgAレベルが著しく低い20歳女性Kを発見した。Kは特別な既往症もなく現在健康である。血液検査の結果、IgAのみが低く他のIgレベルは正常であったが、クームス試験に陽性であり、何らかの自己免疫疾患素因があるものと見られた。両親・祖父母の協力を得て解析した結果、父・父方祖母も同様であり、遺伝子疾患の可能性が示唆されたため、現在遺伝子解析を遂行中である。また、簡便な唾液中のIgA検査法として、イムノクロマトグラフィー法の開発に成功した。
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