研究課題/領域番号 |
16K07749
|
研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
中妻 彩 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (30446075)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アレルギー / 炎症 / T細胞 / サイトカイン / ビタミンA / レチノイン酸 / 樹状細胞 / 粘膜免疫 |
研究実績の概要 |
我々は、ビタミンA欠乏によってレチノイン酸シグナルが低下したマウスでは、腸間膜リンパ節樹状細胞によってIL-6依存的に誘導された食物抗原特異的IL-13高産生炎症性Th細胞が、アレルギー炎症反応の誘導に関与する可能性を見出した。仮にこの新規Th細胞をTh13細胞と呼ぶ。本研究は、Th13細胞の本態を突き止め、アレルギー炎症疾患における役割を検証する。 1. ナイーブCD4陽性T細胞をIL-6存在下で抗CD3+CD28抗体で活性化し、Th13細胞を誘導している途中の培養上清中には、低濃度のIL-4(従来のTh2細胞誘導に使われるIL-4の1/10程度の濃度)が検出された。低濃度のIL-4は、CD4陽性T細胞のIL-4、IL-5またはIL-10産生を誘導せずに、十分量のIL-13産生を誘導した。 2. ナイーブCD4陽性T細胞をIL-4存在下で活性化するとき、レチノイン酸受容体逆作動薬BMS493を添加すると、CD4陽性T細胞のIL-13とIL-9産生は促進され、IL-5産生は抑制された。 3.Th9細胞は、Th9誘導条件であるIL-4+TGF-β存在下で3日間抗CD3+CD28抗体で刺激した直後に、IL-9産生のピークがあり、培養を続けていくとその産生は低下し、3日後にはほとんど検出できなかった。一方、Th13細胞は、3日後の抗体刺激後、さらに培養を続けた方が、IL-13産生が強く誘導され、IL-9産生も低下しなかった。 4.食物抗原を経口投与したビタミンA欠乏マウスの腸間膜リンパ節からCD4陽性T細胞を採取し、サイトカイン産生能を測定したところ、IL-13とIL-9産生が亢進していることが判明した。ビタミンA正常マウスと比較して、IL-4やIL-5産生も亢進していたが、その産生量はIL-13とIL-9と比較して非常に低量だった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-13高産生炎症性Th細胞(Th13細胞)の誘導促進機構や他の類似Th細胞との相違点が明確化でき、生体内で食物抗原特異的Th13細胞が誘導されている可能性も見出せたため、おおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.昨年度、DNAマイクロアレイでTh13細胞のマスター遺伝子の候補遺伝子を複数見出した。これらの候補遺伝子について解析を進めた結果、BMS493によるTh13細胞誘導の促進と一致して、発現量が増強する候補遺伝子はなかった。そのため、BMS493添加群や、Th13細胞誘導に影響を与えるその他の因子を添加した群を追加して、DNAマイクロアレイを再度実施する。 2.IL-13レポーターマウスを用いてビタミンA欠乏マウスを作製し、レポーターの発現や、1.で見出したマスター遺伝子の発現などから、アレルギー炎症反応局所のTh13細胞の存在を検証する。 3.Th13細胞をマウスに移入することによって、アレルギー炎症反応を惹起または増悪できるか検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 高額なDNAマイクロアレイ解析を再度実施する必要が生じたため、物品費の使用を控えた。 (使用計画) マウスの購入費および飼育費、ビタミンA欠乏飼料とコントロール飼料、細胞調製や培養に必要や試薬やプラスチック器具、DNAマイクロアレイ解析、ELISA、フローサイトメトリー、real-time PCRなどのサンプル解析に必要な試薬など、平成29年度の未使用額はすべて物品費に充てる。
|