研究課題
アザ糖である1-デオキシノジリマイシン(DNJ)は桑葉や大豆発酵食品などに含まれαグルコシダーゼ阻害効果により、食後血糖値の上昇を抑制する。DNJを機能性食材として展開するためには科学的な安全性の検証が必要である。本年度は、安定同位体15Nでラベル化したDNJを動物へ経口投与し、DNJの吸収、排出、組織への蓄積を評価する技術を確立することを目的とした。6週齢SDラット(オス)を①DNJ投与群:15Nラベル化DNJを胃ゾンデ投与(投与量:10mg/匹)②対照群:生理食塩水を投与の2群(n=4)に分けた。代謝ケージにて飼育し、0-24時間および24-48時間の尿と糞を採取した。飼育終了後、肝臓、副腎、脾臓、膵臓、腸間膜脂肪、腎周囲脂肪、精巣周囲脂肪、脳、心臓、肺、生殖巣、胃、小腸、大腸を採取した。得られた尿、糞、各臓器の15Nを測定し、DNJの吸収、排出、蓄積を評価した。その結果、対照群における試料中15Nはすべて天然同位体比である0.368%であった。DNJ投与群(投与量10 mg)において、尿と糞を合わせたDNJ量は8.2-9.4 mgであった。未吸収量(糞中DNJ)は個体差が大きく1.1-3.8 mgであった。組織中DNJは肝臓に0.13-0.16 mg存在し、ついで小腸(0.06-0.09 mg)、腎臓(0.02-0.03 mg)で他の臓器もトレースであるものの15Nが存在したことから、DNJの組織への移行が示唆された。以上のように安定同位体15Nラベル化DNJにより精度と感度の良い評価法を確立した。
2: おおむね順調に進展している
安定同位体ラベルした15Nラベル化DNJで精度と感度の高い生体からの測定法が確立できた。本課題を達成する上での技術的な問題をクリアできたことから、次年度以降予定している種々の動物試験が順調に遂行できると期待される。
次年度以降は、動物の匹数を増やして、DNJの吸収、排出の本試験を行う。組織蓄積確認の試験はラベル化DNJをさらに培養、精製し、3か月の長期摂取による組織への蓄積を検討する。
次年度使用額は、研究費を効率的に使用して発生した額である。
次年度は、ラベル化DNJの長期投与試験に必要なラベル化DNJをDNJ産生微生物の発酵により、大量調製する。このため、安定同位体ラベル化硫安の購入に使用する。
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J. Clin. Biochem. Nutr.
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Food Sci. Technol. Res.
巻: 23 ページ: 349-353
10.3136/fstr23.349