研究課題/領域番号 |
16K07753
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
西村 有希 昭和大学, 医学部, 講師 (40276572)
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研究分担者 |
倉田 知光 昭和大学, 教養部, 教授 (80231299)
岩瀬 万里子 昭和大学, 医学部, 助教 (70424273)
鈴木 立紀 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (70406940) [辞退]
内田 直樹 昭和大学, 医学部, 教授 (00286775)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 健康食品 / 薬物相互作用 / チトクロームP450 / CYP3A / food-drug interaction / herb-drug interaction |
研究実績の概要 |
本研究では、現在汎用されている健康食品と医薬品の併用の安全性を薬物相互作用の視点から明らかにすることを目的としている。多くの医薬品の代謝に関与するチトクロームP450 3A (CYP3A)が阻害されると、この酵素で代謝される併用薬の血中濃度を上昇させ、予期せぬ有害作用が生じることも考えられる。そこで、CYP3Aを強く阻害する健康食品をin vitro実験系で明らかにし、ラットを用いたin vivo実験、さらには臨床試験を行う。 本年度は、in vitro実験系でCYP3Aの強い阻害を示したブラックジンジャーが生体内で薬物相互作用を生じるかを明らかにするため、ラットに単回経口投与後、CYP3Aの指標薬物であるミダゾラムを経口投与し、その血中濃度の変化を検討した。その結果、ブラックジンジャー投与により、ミダゾラムの血中濃度が約2倍上昇することが示された。さらにin vitro実験により、ブラックジンジャーによるCYP3Aの阻害は、酵素を不活性化させ、強い阻害が持続するmechanism-based inhibitionである可能性が示された。 一方、近年、飲む日焼け止めとして注目されているシダ抽出エキスを用いて同様の検討を行った結果、in vitro実験系でCYP3Aを濃度依存的に阻害し、ラットを用いたin vivo実験では単回投与によりミダゾラムの血中濃度を約1.6倍上昇させた。 近年、セルフメディケーションの推進により健康食品の需要が高まり、利用者が増加していると考えられる。しかし、高齢化に伴い様々な医薬品を服用していることも多く、健康食品との併用の安全性を明らかにすることは重要である。これまで、健康食品と医薬品の併用による薬物相互作用についての情報はほとんどないが、より有効で安全に健康食品を利用するために、これら情報を提供することは非常に重要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成28年度に行ったin vitro実験およびラットを用いたin vivo実験の結果をもとに、本年度は、CYP3Aを強く阻害した健康食品を用いて臨床試験を実施する予定であった。しかし、その候補であるブラックジンジャーの阻害様式について、さらにin vitro実験で詳細な検討をする必要があった。また、ブラックジンジャーを投与した場合にCYP3A代謝の指標薬物として使用したミダゾラムの血中濃度を測定するうえで、条件検討が必要であった。以上の理由により、臨床試験を実施するのが遅れているが、上記の問題の解決ができたため、今年度は予定通り臨床試験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのin vitro実験、およびラットを用いたin vivo実験の結果より、CYP3A阻害を介する薬物相互作用を生じる可能性が高いことが示唆されたブラックジンジャーについて、ヒトを対象とした臨床試験を行う。 文書による同意を得た日本人健康成人男性を対象とし、ブラックジンジャーエキス1週間摂取によるCYP3A阻害を介する薬物相互作用について検討する。CYP3Aの指標薬物としてミダゾラムを経口内服し、その血中濃度を経時的に測定し、薬物動態学的パラメータに対するブラックジンジャーエキスの影響を検討する。試験はブラックジンジャーエキス非摂取期と摂取期の2期に分けて実施する。 in vitro実験、ラットを用いたin vivo実験、臨床試験の結果を総括し、本研究で検討した健康食品のCYP3A阻害を介する薬物相互作用について考察する。また、本研究でCYP3A阻害を介する薬物相互作用が示唆された健康食品について、併用する可能性の高い医薬品を抽出し、その血中濃度などから有害作用発現の可能性を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度は予定していた臨床試験を行わなかったため、臨床試験を遂行するうえで必要な費用が次年度使用額として発生した。 30年度は臨床試験を実施するため、被験者協力費、試験施設利用費等に使用する予定である。
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