研究課題
近年、食物アレルゲンの一部は、皮膚からの抗原浸入が感作源となることが示唆されている。これを経皮感作と呼ぶが、種々の食品中の経皮感作抗原に関しては十分明らかになっていない。そこで、マウスモデル系を構築し、食品抽出液を皮膚に塗布した際のIgE、IgG1産生を指標に経皮感作抗原を探索した。大豆の場合、Gly m 5やGly m 6、Gly mTIが経皮感作抗原となることを初めて明らかにした。さらに、大豆摂取マウスでは、これらの抗原の経皮感作が抑制されたことから、大豆の摂取によって経口免疫寛容が作動し、経皮感作を抑制する事を示した。卵白を塗布した場合、卵白特異的IgEやIgG1が産生され、また卵白の経口投与で直腸温の低下等のアレルギー症状惹起も起こり、卵白タンパク質の経皮感作が確認された。オボアルブミン(OVA)、オボトランスフェリン(OVT)、オボムコイド(OVM)が主要な経皮感作抗原であることが判明した。これらは、ヒトでの卵白の食物アレルゲンとして知られており、本モデル系がヒトでのアレルゲン探索のモデルとして使用しうる可能性を示した。卵黄にて経皮感作実験を行ったところ、卵黄特異的なIgE産生を認めた。卵黄中の約60kDa付近のタンパク質が経皮感作抗原である事が示唆された。この分子は、卵黄アレルゲンとして知られているα-リベチンである可能性がある。その他、ソバやゴマ、米ぬかなどを用いて実験を行った。ソバの場合、経皮感作が認められ、IgE反応性の主要経皮感作抗原を同定することに成功した。この場合も、本アレルゲンはヒトでのソバアレルゲンとして知られている分子であった。ゴマの場合は、興味深いことに、白ゴマと黒ゴマで経皮感作能が異なり、黒ゴマに比べて白ゴマでは有意に強い経皮感作能を示した。これは黒ゴマ中に含まれる成分が経皮感作を抑制する可能性を示唆し、その同定にも成功した。
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