研究実績の概要 |
プラズマベースイオン注入(PBII)法を用いた殺菌技術の食品への応用を目指し、フラットサワー型食中毒の原因となるGeobacillus stearothermophilusを用い、最適殺菌条件の検討を行った。検討の結果、ディレイ時間を50μS、パルス幅を20μS、印可電圧12kV、RF出力240VA、処理時間10分の条件で、6Dの殺菌効果を得た。次に、殺菌処理メカニズムの解明のため、PBII処理を行った芽胞の表面を、電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、芽胞表面が切断されている像を確認することが出来た。このことから、イオンの物理的衝突が殺菌効果を引き起こしているのではないかと推測された。 次に、PBII法を用いた際のプラズマ生成法の検討を行うため、プラズマシミュレーションソフト(ペガサス社製PIC-MCCM)を用いて、PBII法を用いた際のプラズマのシミュレーションを行った。荷電粒子の移動は Particle-In-Cell(PIC)法でモデル化し, 荷電粒子と, 中性粒子の衝突現象はMonte Carlo collision(MCC)モデルでモデル化し、2 次元直交座標上で, 電極, アース, 誘導体の配置および荷電粒子自身の分布により決まるポテンシャル場の中の荷電粒子の運動を10-10[sec]程度の短い時間ステップで追跡していくことで、プラズマの挙動をシミュレートした。現在まで、ガス種を Ar, 電圧 100V, 周波数13.56MHz としてシミュレーションを行った。その結果、Ar+、 Ar2+、 Ar3+、Ar4+が放電増加と共に, 減少していることが観察され、プラズマイオンの量の変動が、放電開始後約20μsで起きていることが示唆された。これは、G. stearothermophilusの芽胞を用いて実施したパルス幅依存性試験の結果と良い相関を示していた。
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