凍結含浸法は食材の凍結と減圧処理を利用した酵素等の急速含浸法であるが、在宅調理に適用できない。凍結含浸工程から減圧処理を省略した新規酵素含浸法について検討を行った。これまでに食材表面に酵素(ペクチナーゼ)を付着させた状態で食材を凍結・解凍し、そのまま酵素反応させると食材が軟化する現象を見出した。これは酵素が拡散によって食材内に浸透したものと考えられた。そこでこの拡散メカニズムについて検討を行った。 凍結から解凍、浸漬に至る各工程において、酵素等の高分子物質の食材内への拡散作用を確認するため、高分子物質としてブルーデキストラン(BD、分子量200万)を用いた。食材としてダイコン、ジャガイモを用い、事前に10分茹で加熱し、①BDに浸漬した状態で凍結し、凍結した状態のまま切断した。② 試料を凍結し、BD溶液に浸漬して10分間で解凍した後に切断した。③ 試料を凍結し、解凍後、BD溶液に10分間浸漬した後に切断した。その結果、BDは凍結食材を解凍する時に食材内水分を通して拡散・浸透することがわかった。実際に酵素を利用してその効果を調べたところ、BDの浸透結果と一致した。 酵素拡散を利用して食材を軟化する方法として、凍結前に酵素を塗布する方法と凍結食材を解凍する時に酵素に浸漬する方法がある。本法の適用において、事前加熱、凍結方法、酵素濃度、解凍温度、酵素反応方法、酵素液の浸漬方法、酵素粉末の塗布方法及び酵素粉末の賦活剤の利用法についてそれぞれ適応性について明らかにしておく必要がある。そこで、各工程について食材の硬さを指標に適応性について評価した。その結果、凍結前酵素浸漬と解凍中酵素浸漬では両方良好であるが、酵素粉末では前者がより有効であった。その他の工程では、酵素反応を低温(3℃)で長時間(12時間)行うことで、ほとんどの事例で食材を良好に軟化させられることがわかった。
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