研究課題/領域番号 |
16K07760
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
佐々木 朋子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品加工流通研究領域, 上級研究員 (10353939)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 澱粉 / キサンタンガム / 酵素分解性 |
研究実績の概要 |
申請者は数種類の多糖類と澱粉を組み合わせた試料を用いて澱粉消化性を評価し、すでに多糖類の中ではキサンタンガムが米、トウモロコシ、馬鈴薯由来のいずれの澱粉にも顕著に高い消化遅延効果を示すことを明らかにしている。そこで本年度は、澱粉とキサンタンガムの単純な混合系から実際の加工食品であるパンに研究対象を発展させ、キサンタンガムの澱粉消化性に及ぼす影響を検証した。米粉パンにキサンタンガムを0.5%~2%の濃度で添加し、パンを焼成後0日目および4日目のサンプルについて澱粉消化性の評価を行った。澱粉消化性の評価にはキサンタンガムが澱粉自体の消化性に及ぼす影響を解析するために凍結乾燥後粉砕した試料と、パンの物理的な要因を抽出するために、ヒトの咀嚼を模擬した破砕法で処理した試料を用いた。凍結乾燥後粉砕した試料についてはキサンタンガムの添加濃度が1%以上の試料については反応時間10分後の澱粉消化率が低くなる傾向が認められたが、20分後では抑制効果は見られなかった。一方、ヒトの咀嚼過程を模擬した破砕法で処理したサンプルについては、添加濃度が2%でキサンタンガムの抑制効果が反応時間20分後でも認められた。キサンタンガムを添加したパンは添加濃度の上昇に伴い比容積が減少し、添加濃度2%のパンでは膨らみも抑えられ、クラムの密度が顕著に高かった。以上の結果から、キサンタンガムは澱粉との相互作用等により、焼成したパンの中に含まれる澱粉自体の消化性を抑制する効果は小さいが、パンのマトリクス構造を改変することにより、澱粉の分解率を物理的に抑制していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画であった「キサンタンガムの澱粉消化性に対する抑制効果に及ぼす食品加工条件の影響」については、実際の加工食品であるパンを用いて、添加濃度を変えて抑制効果を検証し、ある一定濃度以上では抑制効果が認められたことから、進捗状況はおおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は1)食品ネットワーク構造を利用した消化酵素の浸透性阻害作用と食品加工条件の関連性解明、 2)咀嚼による破砕性および食塊形成と澱粉消化性の関連性解明について、研究を推進する予定である。まずは、新用途開拓が期待されている米に着目し、消化酵素の浸透性を阻害するようなネットワーク構造の強化を目指した加工条件を検討する。さらに、申請者は咀嚼を模擬した破砕処理を加えた澱粉消化性のin vitro評価法を確立しており、その評価法で得られた結果がヒトの食後血糖値との間に高い相関性があることを確認している。そこで、物性の違いにより破砕性が異なる試料を用いて、人工消化液中の拡散性と酵素分解により遊離するグルコースの量を解析し、破砕後の粒度や食塊の物性との関連性を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は研究費を効率的に使用して発生した残額である。
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次年度使用額の使用計画 |
澱粉消化性の評価に用いる酵素類の購入に使用する予定である。
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