研究課題/領域番号 |
16K07763
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研究機関 | 福岡県工業技術センター |
研究代表者 |
木村 太郎 福岡県工業技術センター, 化学繊維研究所, 専門研究員 (40416491)
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研究分担者 |
浦川 稔寛 福岡県工業技術センター, 化学繊維研究所, 研究員 (70416527)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エチレン / 青果物保存 |
研究実績の概要 |
青果物の流通において、成熟ホルモンであるエチレンを随時除去することは鮮度保持の観点から重要である。研究者らは、「電解素子によるエチレン分解技術」を用いた新規エチレン分解装置の開発を目指している。しかしながら、「電解素子」の製造に白金やナフィオンといった高価な素材が必要であるため、製造コストが高いという課題が残っている。従って本研究では、白金やナフィオンの使用量の低減、代替素材の転換、について検討し、低コストかつ高効率なエチレン分解システムを開発することを目的とする。28年度は「電解素子」の作製における触媒量の低減及び低コスト触媒への代替を中心に検討を行った。 (1)触媒担持方式の検討による白金使用量の低減:白金の電極への担持方法を比較検討した。まず、凍結乾燥法、スパッタリング法による担持を試みたところ、ほとんど触媒活性は観察されなかった。これは、担持の過程において触媒表面が不活性化されているためと推測された。これに対し、メッキ法による担持では、ヒドロキシルラジカル(エチレンを分解する成分)が従来品の約2倍生成していることが確認された。メッキ法は量産化に伴い大幅なコスト低減が期待されるため有望な担持方法と考えている。今後は再現性も含め条件や電解質膜との組み合わせについて検討していきたい。 (2)代替触媒の検討:白金以外の安価な触媒について検討を行った。パラジウムについて検討を行ったが十分な性能は得られなかった。現状ではメッキ法などによる白金使用量の低減の方がコスト低減に寄与すると判断される。 (3)試作した「電解素子」の基本性能評価:「電解素子」を用いてエチレン分解評価実験を行った。容量約30Lのチャンバーに一定量のエチレンを封入し、「電解素子」による分解挙動を観察した。エチレンは概ね良好に分解され、濃度によるが分解能は2.5ml/day以上を達成することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は、「電解素子」を構成する触媒の低減を試みた。そのために、触媒金属の担持方法を検討し、メッキ法が効率よく担持できることが明らかとなった。安価な金属についても触媒利用についての検討を行った。残念ながら現在のところ、使用に耐える効率のものは見いだせなかったが、装置開発の上で選択肢を絞り込むという点では意味のある結果と考えている。また、「電解素子」を用いてエチレン分解評価実験を行い、目標とする2.5ml/dayの効率を達成することが出来た。メッキ法についてはもう少し詳細を検討していく必要があるが、概ね計画通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られた知見を元に、「電解素子」の作製における電解質膜の低減及び低コスト素材への代替について検討を行う。電解質膜の最適化を行いコストと性能の両面を満たす条件を確立する。また、試作した「電解素子」について湿度や温度を変えながらより実践的な環境での性能評価を行う。 (1)電解質膜の膜厚と種類の最適化検討:電解質膜の膜厚とエチレン分解能の相関をプロットし、最適厚みを探索する。さらにエチレン分解能以外にも、「電解素子」作成の際の破れや短絡のリスク発生頻度についても情報を収集する。従来はナフィオン膜を用いていたが、他の電解質膜についても評価を行い、比較検討を行う。 (2)塗布法の検討:電解質膜を挟み込むのではなく電極に直接塗布する工程について検討を行う。これにより電解質膜の薄膜化、ナフィオンの効率的利用が期待できる。溶液濃度及び塗布厚みを検討することにより安定した成膜条件を確立する。 (3)試作した「電解素子」のエチレン分解性能評価:従来の評価法に加え、より実践的な評価を行う。コンテナ環境下を想定し、温度を5~40℃まで変化させ、エチレン分解能に及ぼす影響を把握する。また、湿度についても10~90%の間で実験を行い、その効果を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度は、研究に必要な白金電極などの消耗品の一部を当所内の経常経費から調達することが出来たため計画よりも研究費の節減が出来た。従って未使用分は29年度に繰越したい。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度は電解質膜、電極材料など高額な消耗品等が必要になるため、十分なデータ取得が出来るように繰り越した研究費を使用したい。
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