研究課題/領域番号 |
16K07764
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
柿澤 宏昭 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90169384)
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研究分担者 |
石崎 涼子 国立研究開発法人森林総合研究所, 林業経営・政策研究領域, 主任研究員 (10353575)
早尻 正宏 北海学園大学, 経済学部, 准教授 (50466637)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 市町村林政 / 林業生産 / 行政能力 / 地域再生 |
研究実績の概要 |
林野庁・岩手県・北海道において市町村における独自林政の取り組み状況について情報収集を行い、特徴的な取り組みを行っている地域を特定した。また、小規模自治体に独自林政の展開に関わる問題が集中して生じている一方で、独自の取組みを行っている自治体も多いことがわかり、小規模自治体についても調査を開始することとした。 先導的に調査を行うこととしていた合併市町村については津和野町のほか、富山市・豊田市などに調査を行い、組織内での専門性の育成・継承の仕組みをつくり、独自政策展開の基盤をつくっていることを明らかにした。また豊田市のように組織規模が大きく、森林行政の蓄積があるところでは条例策定から森林整備までフルセットで独自林政に取り組んでいるが、津和野市のように相対的に規模が小さく林業が活発ではない地域では、包括的な方向性を定めた条例を策定しつつ、自伐型林業を地域おこし協力隊を活用して進めるなど、地域に即してニッチ的な取り組みを行っていることを明らかにした。 小規模自治体については中川町、大豊町等に対して調査を行った。中川町では林業が活発でない地域にあることもあって、地域資源の特徴を生かして広葉樹材の高付加価値化といったニッチ的な戦略を打ち出しており、また職員が地域での専門家のネットワークを形成して行政能力の向上を図っていた。一方、大豊町では林業が活発な嶺北地域に位置していることから大規模工場誘致などによってマス生産を中心に活性化を図ろうとしており、また林野庁からの出向者を迎えて行政能力の向上を図っていた。 以上のように自治体の規模や林業活動の状況によって市町村の独自戦略の設定方針や行政能力の向上の手法に違いを明らかにすることができ、自治体林政研究のあり方に重要な示唆を与えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した合併市町村に対する調査を進めつつ、小規模市町村に対する調査も、早期に着手したほうが良いとの判断から、開始しており、双方のタイプの基礎自治体に対して情報の収集・解析を進めることができ、予定よりも進んでいる。また行政組織体制の整備や政策の特徴や狙いなどについても予定通り資料収集・分析を行うことができた。 政策プロセスの分析については調査対象市町村によって精粗があり、十分な調査ができなかった市町村に対して追加調査が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の調査研究で、研究計画を順調に進めることができ、特に変更を必要とするところは認められなかったため、当初の計画通り研究を進める。 独自林政の展開方向として、木質バイオマスや多面的機能発揮も重要な課題であり、こうした取り組みを進めている市町村が多くあるので、こうした市町村も調査対象として組み込んでいく。 そのうえで、組織体制の整備や政策プロセスの分析を引き続き進めながら、なぜ取り組みがうまく進んだのかに関わる政策ロジックの分析を進める。この際、自治体外部との連携についても注意を払う。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査相手先の市町村の都合で、当初予定していた調査が次年度に繰り越しになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた調査ができなかった自治体については次年度に調査を行うこととする。
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