小規模市町村における森林管理政策の展開について明らかにした。私有林の組織化に関しては役場や森林組合が協力して所有者とのコミュニケーションを密にすることで実質的な委託を実現し、またこの実績をもとに金融機関を関割らせることで信託への道を開けることが明らかになった。また公有林に信託を設定して、経営の合理化を図ろうとする市町村が現れるなど、自治体が経営効率化のために森林所有に「介入」している状況が明らかになった。 森林環境譲与税や森林経営管理法の施行をにらんだ自治体の動きについても分析を行った。多くの市町村で、林務行政の実行に困難を抱える中で、都道府県が多様な形態で市町村への支援を図ろうとしており、このなかには広域行政の導入の提案も含まれていた。市町村の中でも体制強化に向けて動き出したところがあり、これら施策をきっかけとして自治体林政に変動が起こる可能性があることが明らかとなった。 森林環境譲与税が森林をほとんど持たない都市圏自治体にも供与されることから、これら都市型自治体と農山村部の自治体との関係構築が重要となっており、都市型自治体における木材活用を中心とした農山村連携についての調査を行った。港区などで新規建築に際して木材利用を行うことを要求し、具体的な提案を行う仕組みを設けることで実効性を確保している事例が見られた。都市部の木材利用に関しては、建築主体に木材利用のノウハウが少ないことから、これら主体を支援し、木材生産者とのつながりをつくる調整組織の存在が重要であることが明らかとなった。
|