森林生態系における地上部(林冠・樹幹)と地下部(林床)のサブシステム(食物網)のつながりを明らかにするために、地上部に形成されている腐食連鎖系生物の棲みか(樹洞、着生植物)およびそれら動物群集の構造に着目して研究を進めてきた。平成30年度には以下の項目について調査を実施し、成果を発表した。 1.森林地上部に存在する陸生腐食者群集の2種類の生息場所(付着リター[HL]と樹洞内のリター[CL])と林床リター間で動物群集を比較し、HLにおいて動物群集に対するパッチサイズと資源量の相対的重要性を評価した。その結果、1) HLとCLが動物にとって異なるハビタットであること、2) 主要動物群がHLにおいて異なるハビタット選好性を有すること、3) HLにおける動物個体数はリター密度(面積あたりのリター量)よりもリター量によって影響を受けていること、を示した。 2.森林地上部(樹洞の水溜まり)を繁殖場所とするアイフィンガーガエルに着目して、樹洞の形質がアイフィンガーガエルによる利用に与える影響を明らかにするため、樹洞の形質(樹洞の高さ、胸高直径、水深、入口面積など)とアイフィンガーガエルによる利用の有無(卵、幼生の有無)を測定・記録した。解析の結果、アイフィンガーガエルの利用には樹洞の高さと樹洞入口の角度の効果が有意に認められた。これは、アイフィンガーガエルが地表性の捕食者から遠ざかるため、高い樹洞を利用していることを示唆している。 3.亜熱帯淡水湿地林の林床と着生植物(オオタニワタリ)上における大型土壌動物群集とリター分解を調査した。調査の結果、リター分解に対する大型土壌動物の貢献度は、①湿地林・林床や陸域林・林床よりも湿地林・樹上部(オオタニワタリ上)において大きく、②サイズの小さなオオタニワタリほど大きいことが明らかとなった。
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