研究課題/領域番号 |
16K07778
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
鍋嶋 絵里 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (10710585)
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研究分担者 |
石田 清 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (10343790)
織部 雄一朗 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 材木育種センター, 主任研究員 等 (40370853)
中塚 武 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (60242880)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 年輪 / 開葉フェノロジー / 温暖化 / 酸素同位体比 |
研究実績の概要 |
ブナとミズナラは、日本の冷温帯林における優占樹種である。系統的に近い一方で、葉や幹の木部形成のフェノロジーには大きな違いがあることから、気候変動への応答の違いを明らかにし、種に応じた適応策を構築する上で重要な材料といえる。本研究では、温度環境と積雪環境が異なる地域におけるブナとミズナラを対象に、季節的な成長の変動とその生理的、解剖学的メカニズムについて明らかにすることが目的であり、これまでの研究結果から、開葉フェノロジーおよび個葉光合成の季節変化と、幹や枝における木部形成の季節変化との間には、両樹種ともに密接な関係があることが明らかとなった。具体的には、環孔材であるミズナラでは貯蔵デンプンを用いて幹の木部形成が開始し、孔圏道管が形成された後に個葉の光合成速度が最大化するが、散孔材であるブナでは葉からの光合成供給の開始後に幹の木部形成が開始する。しかし、枝ではどちらも葉の形成開始頃に木部形成が開始しており、貯蔵デンプンの減少とその後の展葉に伴う貯蔵デンプンの回復がみられた。枝での両樹種の結果は、少なくとも枝においては、展葉に伴って貯蔵デンプンの利用から当年の光合成産物の利用へと炭素ソースがシフトすること、および、これらが両樹種で共通することを示唆している。また、ミズナラで行った幹の木部における水素と酸素の安定同位体比の結果からは、貯蔵デンプンの利用が孔圏形成中に急激に低下することが示唆されており、孔圏の形成は展葉期間とほぼ一致する。よって安定同位体比の結果からも、展葉に伴う炭素ソースのシフトが起きることが支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道大学にある真空蒸留装置を用いて、土壌および木部の酸素同位体比を分析するための水抽出を行った。一部は終了したが、妊娠のため出張や分析が途中から難しくなり、中断している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、北海道大学における土壌および木部の水抽出と酸素同位体比の分析を進める。しばらくは出張が難しいため、水抽出については装置を管理している研究者に共同研究としてお願いする予定である。また、セルロースの安定同位体比の分析をおこなう必要があるが、これについても出産後に分析が可能になり次第、進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中に終わらず、次年度に持ち越した実験、分析、および出張があるため。次年度の分析等で用いる予定である。
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