研究課題/領域番号 |
16K07780
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡辺 敦史 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10360471)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リュウキュウマツ / 葉緑体全ゲノム / 古地理学的知見 / 東アジアマツ属植物 |
研究実績の概要 |
リュウキュウマツの進化的位置を特定するため、既に公表されているクロマツ葉緑体ゲノムを利用して、葉緑体全体をPCR増幅出来るプライマーを設計した。これらPCR産物の塩基配列超は5kbp~10kbpであり、リュウキュウマツでも全て良好に増幅した。これら増幅産物(アンプリコン)に基づいて断片化後、アダプターを設計し、次世代シーケンサーMiseqを利用して塩基配列の決定を行った。これにより決定された塩基配列はリュウキュウマツ葉緑体ゲノムの約80~90%と推定される。1度のランにより決定できなかった理由として、ソフトウェア自体の能力に依存していると考えられた。 得られた塩基配列を利用して、東アジアに分布するマツ属植物と比較した結果、予想されたように、 ①リュウキュウマツはアカマツよりもクロマツとより近縁な関係にあった ②リュウキュウマツは中国や台湾に分布する他マツ属植物と近縁であったが、塩基配列にリュウキュウマツ特異な部分が認められ、固有種として認定できる可能性が高い。 ことが明らかとなった。これらの結果に基づいて、古地理学的知見と併せてリュウキュウマツの拡大経路について推定した。一方で、本研究で用いたサンプルが沖縄本島で採取されたものであり、より大陸との古地理学的関係性が深い、宮古島や石垣島などに生育するリュウキュウマツは独自の系統学的系統を示す可能性があることから、これら島嶼に赴きサンプリングを行った。 今後は、島嶼間の関係性を中心に解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、クロマツ葉緑体ゲノムを利用したプライマー設計では、リュウキュウマツ葉緑体ゲノム全体のアンプリコンが得られる保証は不透明であったが、比較的容易にゲノム全体の情報が得られたことから、進化的位置について概ね理解することが出来たことによる
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、島嶼群からサンプリングを行い、これらのサンプルを利用して更に詳細な解析を進める予定である。古地理学的知見についても加味しながら、沖縄島嶼群全体に分布するリュウキュウマツの固有性など明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ当初計画通り予算については執行できている一方で、計画を進める中で来年度もこの計画を中心に沖縄で発生するマツ材線虫病に向けたアプローチや保全策の立案などに経費がかかることから、無理な執行を控えたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由と共に、当初目的を達成すると共に、この研究を中心としてより保全も含めた寄り視野の広い研究へと発展させる意向である。
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