これまでにリュウキュウマツの進化的位置の解明に取り組み、リュウキュウマツとクロマツ間には直接的な祖先ー子孫関係はなく、タイワンマツなど東アジアに分布するマツ属植物と強く関係することが明らかとなった。古地理学的知見に基づけば、奄美大島・沖縄本島と石垣島・西表島に分布するリュウキュウマツには相違がある可能性が考えられた。最近では、次世代シーケンサーの出現により、集団構造を解明する上で新たなDNAマーカーが多数報告されている。今後のリュウキュウマツ抵抗性育種を視野に入れれば、ゲノミックSSRマーカーが最初に開発されるマーカーの一つであると考え、そのライブラリー作成に取り組んだ。ゲノミックSSRのモチーフには(AG)nおよび(AC)nを選択し、ライブラリーの開発に取り組んだところ、濃縮率が30%以上となるライブラリーを開発することが出来た。現在、このライブラリーから得られたマーカーの候補について順次スクリーニングを進めているところである。 これとは別にリュウキュウマツの抵抗性を検証するため、リュウキュウマツ苗を育成し、沖縄本島の被害地より新たな線虫系統作出を行った。その結果、新たに3つのアイソレイトが作出され、そのうち一系統は強病原性を示した。さらに、リュウキュウマツを対象として樹体内におけるマツノザイセンチュウの増殖過程および遺伝子発現についても初めて明らかにした。この結果は、クロマツとは異なり、むしろタイワンマツで報告されている症状に類似することから、マツ材線虫病の観点からもリュウキュウマツはクロマツとは異なる系統であることが示唆された。 従って、当研究の目的であった進化的位置について、リュウキュウマツは東アジアに分布するマツ種群と同一系統に属し、本州に分布するアカマツやクロマツ尾てゃことなる系統であることが明らかとなった。
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