研究課題
雌雄異株植物は雌雄同株植物と比べて繁殖において不利を抱えている。実際に全被子植物の中で雌雄異株植物は約6%に過ぎない。しかし、雌雄異株植物は世界中のさまざまな環境下に生育している。雌雄異株植物の有利な点の一つとして、集団内の遺伝的多様性が高いことが予想されてきたが、実証データはほとんど見当たらない。この予想を検証するため、本研究ではクスノキ科内の雌雄異株樹種2種と雌雄同株樹種2種を対象に、遺伝的多様性の比較を行った。各種ごとに種子、実生、成木の生活史段階の個体からDNAを抽出し、次世代シーケンサーにより、大量のSNPsを検出した。雌雄同株植物のホソバタブとヤブニッケイについては、近交係数の値は種子の段階で大きく、実生段階で小さかった。雌雄異株植物のイヌガシとシロダモでは、生活史段階ごとの近交係数の大きな変化はみられず、全体的に雌雄同株植物よりも小さい値であった。この結果から雌雄異株植物は近親交配を回避することが確認された。さらに、クスノキ科の落葉低木であるヤマコウバシの遺伝情報を調べた。ヤマコウバシは雌雄異株であるが、日本では雌株だけが見つかっている。ヤマコウバシの親木や種子のサンプルを春日山原始林を含めて全国各地から集め、塩基配列をサンプル間で比較したところ、種子の遺伝子型は母樹のものの正確なコピーであること、日本中のサンプル間で変異がほとんど見られないことが明らかになった。これは、直線距離にして1000 kmを超える範囲に分布するヤマコウバシが、たった 1本の雌株から生じた巨大なクローンであることを意味する。
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Forests
巻: 21 ページ: 1-13
10.3390/f12020227
https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2020/210226-1