研究実績の概要 |
1.安定同位体比を用いたミズゴケ植物体の窒素固定機能の評価:窒素、炭素安定同位体比について合計218のデータを得た。これら全データを総合して産地間の比較について検討を行った結果、タデ原湿原、坊ガツル湿原の試料については窒素固定に依存して窒素源を得ている可能性が高いことがわかった。また東落石湿原の試料はマイナスの値を示したが、これは海洋からの窒素供給の可能性を示唆する。 2.ミズゴケ植物体に生息するユーグレナ属種の生理活性の評価:ミズゴケ類と共生するユーグレナ属種の単離の方法について、培地の選択に関する検討を行った。Hoagland液体培地で集積培養を行った後に、生理食塩水で処理し、CM固体培地で培養することで、単離されたコロニーが得られた。このうち、独立で生息が確認されている1産地の個体群についてはユーグレナと確認できる細胞からなるコロニーが単離できたが、残りの3産地のものに関しては、単離はされたものの、コロニーを構成する細胞がユーグレナであることは確認できなかった。 3.ミズゴケ植物体に生息するユーグレナ属種およびミズゴケに共生する細菌の単離と遺伝子解析:ユーグレナ属種に関しては、これまでに確認されている4産地のコロニーについてそれぞれ培養を行い、遺伝子解析を行った結果、4産地中1産地の個体群に関してはEuglena mutabilisであることが確定された。また、共生細菌については、国内2産地のミズゴケ試料を中心に、ミズゴケ懸濁液の無窒素培地(BG-110培地)での60日間の培養の結果得られたコロニーについて、遺伝子解析を行った結果、56のコロニーのうち6コロニーについて属レベルで同定された。確認された共生種は、Pandoraea, Sphingomonas, Paraburkholderia, Burkholderia の細菌4属と、緑藻類のCoccomyxa であった。
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