研究課題/領域番号 |
16K07787
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
佐藤 孝弘 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 支場長(林業試験場) (50414256)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 知的障がい者 / 森林教育活動 / 重度者 / ストレス |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)森林での活動を構成する諸要素と活動への評価の関係性の検討、(2)重度者の参加様態の精査、(3)森林活動のストレス低減効果の検討から地域資源としての森林の活用策について提言を行う事を目的とする。平成29年度は知的障がい者施設等との連携による森林教育活動の実践から各調査項目に係る調査分析に取り組んだ。 研究項目(1)では、申請者が平成29年度に実践した活動並びに過去に実践した活動への施設職員からの評価に統計手法を適用し、施設職員が森林活動の評価で重視する「活動の雰囲気」「重度者の参加」の基準と活動構成要素との関連性を検討した。なお、活動の構成要素については、これまでの7条件(内容・場所・参加形態・移動・要求動作・器材・動植物)に安全性・準備・時間・活動目的・降雨の5条件を加えた12の条件とした(総事例数100:数量化Ⅰ類を適用)。その結果、活動の雰囲気では「場所」「参加形態」「器材」「安全管理」「時間」「活動目的」、重度者の参加では上記に加えて、「要求動作」「動植物」「準備」「時間」「降雨」への配慮が求められることが示唆された。 研究項目(2)では、活動評価に係るアンケート調査の自由記載の内容に形態素解析・主成分分析を適用して得られた結果より、ゲーム・体験型活動と散策型活動への意見(特に重度者のための改善に関するもの)を抽出・例示した。その結果、重度者の参加への配慮事項は散策型の活動では「時間」「体力」「天候」「散策路の状態」「運営」の状況との関連が強く、ゲームや体験型では「時間」「興味・理解」「安全」「実施環境」との関連が強いことがわかった。 研究項目(3)では、被験者の心拍間隔から自律神経の状態を測定する器機を用いて、被験者16名を対象に活動前後のストレス状況の測定を行った。その結果、9名の被験者にストレス緩和の状況が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は知的障がい者施設や特別支援学校との連携による森林教育活動の実践や申請者が過去に実践した活動から得られたデータ(職員・教師からの評価や意見・ストレス測定値等)を用いた分析検討により、研究申請時に掲げた調査項目に関して適切な成果を得ることができたと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も引き続き、知的障がい者施設や特別支援学校との連携を図り、障がい者との森林教育活動の実践を通じ、申請時に示した3つの研究項目の遂行に取り組む。また、各研究項目で得られた検討・考察結果のとりまとめと関係機関への情報提供に取り組む。得られた成果は、個人情報の保護に十分に留意し、学会発表・論文執筆・技術指導等により社会への発信を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は平成28年10月末に追加採択の連絡を受けた。北海道において当時期は冬季であり、森林をフィールドとした実践活動には、気象的要因(冬季積雪・荒天・現地への移動)や施設利用者の健康安全面における困難性が伴うため、実践を通じた調査分析が行えなかった経過があることから、初年度分の予算が繰り越された状況にある。また、平成29年度についても実施フィールドにヒグマの出没が見られたことから活動実施を見送った経緯もあり、このため、旅費・物品費等の使用実績が少なくなり、次年度使用額が生じた。
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