研究課題/領域番号 |
16K07788
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
越川 昌美 (金尾昌美) 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (80291045)
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研究分担者 |
渡邊 未来 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (50455250)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Ca供給源 / Sr同位体 / 火山灰 / チャート / 渓流水 |
研究実績の概要 |
森林土壌のカルシウム(Ca)供給は、生態系の酸性化抑制と生物への養分供給に重要である。日本では、森林土壌中に混入している火山灰が、Ca 供給に大きく寄与していると考えられるが、火山灰は地形等の影響で不均一に分布しているため、集水域単位での寄与評価は困難であった。本研究では、渓流水中Ca の起源を火山灰・基盤岩・大気に分け、それぞれの寄与率を評価する。そのために、Ca と動態が類似したストロンチウム(Sr)に着目し、その安定同位体比が起源毎に異なることを利用した手法を開発することを第1の目標とする。さらに、 Ca 供給能に対する火山灰の寄与が異なると予想される国内3集水域で、Ca の起源別寄与率を比較して火山灰の重要性を示すことを第2の目標とする。 平成28年度は、調査地として、風化が遅くCa 供給機能が低い岩石であるチャート(堆積岩の一種)が存在し、かつ赤城山に由来する火山灰が分布する栃木県雨巻山地域を選び、渓流水の広域調査を実施した。まず、地形図と地質図を参考に、採水地点の地質がチャートである30地点と砂岩又は泥岩である14地点で渓流水を採取した。位置情報と地形図に基づいて決定した採水地点の集水域と地質図を用いて地質解析を実施した。集水域を単一の地質が占めたのは、チャート12地点、砂岩4地点、泥岩2地点であり、他の集水域には2種以上の地質が存在した。渓流水の主要元素濃度およびSr同位体比を測定し、集水域地質との関係を解析したところ、チャートの集水域は砂岩の集水域よりもSrおよびCaの濃度が低くSr同位体比が低い傾向を示した。文献によると調査地周辺ではSr同位体比は火山灰<大気降下物<基盤岩の順に上昇すると考えられることから、チャートの集水域の方が砂岩の集水域よりも渓流水中のSr(およびCa)に占める火山灰由来のSr(およびCa)の寄与が高いことを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測地を選定し、予想と矛盾しない結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度の解析において文献値を使用した栃木県雨巻山地域の大気降下物由来Sr同位体比を実測に基づいて評価するために、通年降水観測を実施する。また、平成28年度に予備的に9検体だけ測定した基盤岩由来Sr同位体比を、より精度よく決定するための分析を追加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
イオンクロマトグラフ装置のサプレッサ・プレカラム・分析カラムが想定より長持ちして購入を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額相当を用いてイオンクロマトグラフ装置のサプレッサ・プレカラム・分析カラムを購入する。
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