研究課題/領域番号 |
16K07789
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研究機関 | 国立研究開発法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
溝口 康子 国立研究開発法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (90353870)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 下層植生 / 撹乱 / 光合成有効放射量 / フラックス / スペクトル解析 |
研究実績の概要 |
森林生態系が受ける様々な撹乱が炭素動態に与える影響の解明は、長期にわたる森林の炭素動態の理解と精度の高い予測のために不可欠である。2004年に台風撹乱で大きな被害を受けた札幌市羊ヶ丘の落葉広葉樹林では、撹乱以前から継続して森林上でのCO2フラックス観測が行われている。撹乱後、林相が大きく変化し、下層植生が森林全体のCO2吸収量に大きな役割を果たしていると考えられている。 撹乱後、バイオマス量の増加した下層植生の森林全体のフラックスに対する寄与を明らかにするため、高さ7mの高さに超音波風速温度計、CO2/H2Oガスアナライザーおよび通風温湿度計を設置し、森林下層におけるフラックス観測を8月から開始した。パワースペクトルの形状は、これまで森林群落内でフラックスが適用されてきたサイトと同様の形を示していたことから、フラックス解析が適用できると判断し、林床のフラックスを求めた。9月の林床CO2フラックスは、日中、樹冠上の林床フラックスの4割程度になることもあり、林床フラックスが森林全体のCO2フラックスに大きく寄与していることが、フラックス観測からも確認された。 また、光合成の環境因子として最も重要な光合成有効放射量の測定精度を高めるため、経年劣化が従来型に比べて非常に小さいことが確認されているドーム入り光量子センサを基準器として、通常観測に用いる光量子センサの比較検証を行った。これらの検証データから器差及び経年変化補正に必要な校正係数を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、光量子センサの校正係数を得ることができた。さらに、森林下層におけるフラックス観測を開始し、スペクトル解析の結果、概ねフラックスデータとして使用できる特性を持つことが確認できたことから、下層におけるCO2フラックスのデータが取得できた。また、予想通り、下層におけるCO2フラックスは、森林全体のCO2吸収量に大きく寄与していることが確認された。以上のことから、当初の今年度の計画は概ね達成された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、今年度開始した森林下層におけるフラックス観測を継続する。また、別プロジェクトで行われていた森林キャノピー上におけるフラックス及び気象観測が今年度で終了したことから、これらの観測を引き継ぎ、森林上の観測を継続する。これらの観測データから、下層植生が森林全体のCO2収支に寄与する割合を求める。さらに、撹乱以前の対象森林の光合成パラメータ抽出とともに、森林下層の光合成パラメータの抽出を行う。 これらの観測と平行してバイオマス調査を行い、サイトの現存炭素蓄積量を求めるとともに、過去のデータと比較することにより炭素蓄積増加量及び森林構造の変化を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会発表を行わなかったこと、観測補助の賃金が必要にならなかったことから、使用額が予定額を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、森林下層におけるフラックス観測に加え、本研究の一部として森林上のフラックス観測も行う。このため、2高度のフラックス観測精度維持のためのセンサ校正、レファレンス及び校正用標準ガス購入費用に使用する。
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