研究課題/領域番号 |
16K07790
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
小長谷 賢一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所森林バイオ研究センター, 主任研究員 等 (30582762)
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研究分担者 |
谷口 亨 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所林木育種センター, 主任研究員 等 (00360470)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンゴ小球形潜在ウイルス / スギ / エピジェネティクス / NPBT / 雄性不稔 |
研究実績の概要 |
植物ウイルスベクターは、植物へ感染するウイルスを遺伝子の運搬体(ベクター)として用い、目的遺伝子を植物体内で発現制御できる系として、遺伝子の機能解析や形質の改変等に利用されている。本ベクターの最大の利点は遺伝子組換え植物を作製する工程が不要な点にあるが、針葉樹等の林木におけるウイルスベクターの報告例はこれまでに無い。これまでリンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)が、スギおよびクロマツへ潜在感染すること、また、色素合成に関与する遺伝子を組み込んだALSVベクターを接種することで本葉がアルビノ様に白化することを確認している。これらの結果は、ALSVベクターの接種によって誘導される遺伝子発現抑制機構により、目的遺伝子をノックダウンすることで遺伝子の機能解析や形質改変が可能であることを示唆するものである。本研究ではALSVベクターを用いて花器官形成に関与する遺伝子を制御することで、スギを効率的かつ迅速に無花粉化させる技術の確立を目指す。 雄花で特異的に発現し花粉形成に関与すると推定される遺伝子8種について、ノックダウンを目的とした組換えALSVベクターを作製し、スギ不定胚へ接種後発芽させた。RT-PCR法により、接種した9割以上の個体にALSVの感染が確認された。感染個体についてジベレリン溶液へ浸漬処理し、培養ビン内で育成したところ、無菌的に雄花を着生させることに成功した。さらに、野生型のALSV感染個体の雄花は低温処理することによって少なくとも小胞子期まで発達することを確認した。 また、定量RT-PCR法によって雄花で発現し花粉形成に関与すると推定される遺伝子を新たに9種同定することに成功し、これらを標的とした組換えALSVベクターの作製とスギへの接種を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおりALSV接種個体の育成を行い、雄花の着花に成功した。低温処理により小胞子期までの発達を確認できたため、標的遺伝子のノックダウン個体の雄性不稔性解析が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
標的遺伝子のノックダウン個体の雄性不稔性を確認する。また、今年度接種した個体については同様に着花誘導を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ALSVベクターを作製する際のオリゴDNA合成が計画よりも短鎖で合成できたため、残額が生じた。次年度、ALSV検出用のオリゴDNAを合成する計画のため、差額分はオリゴDNA合成費用に充てる。
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