研究実績の概要 |
本研究では、サクラの栽培品種における多様な花形質がどのような遺伝子・ゲノム領域によって制御されているかについて明らかにすることを目的としている。そのためには、詳細なDNA分析を行う必要があり、ゲノム解析手法の一つであるRAD-Seq法であれば、サクラのゲノム全体から多数のDNA多型情報(品種間で塩基配列が異なる部位、数千~数万サイト)を効率的に取得できると考えられる。RAD-Seq法は制限酵素の認識サイト近傍の塩基配列を解読する手法であり、特に2種類の制限酵素を組み合わせてDNAを断片化するddRAD法は、制限酵素の組み合わせ方によって、データ量を調節できるので、対象種のゲノムサイズや研究目的に応じた実験条件の設定が可能である。 今年度はddRAD法によるサクラのゲノム解析のための予備実験を行うことで、実験条件によって得られるデータ量がどのように変化するかを検討した。サクラの栽培品種より抜粋した8サンプル(普賢象、駿河台匂、一葉、白妙、御室有明、十月桜、八重紅枝垂、染井吉野)を9通りの制限酵素組合せ(BamHI-MluCI, BamHI-MseI, BamHI-MspI, PstI-MluCI, PstI-MseI, PstI-MspI, SphI-MluCI, SphI-MseI, SphI-MspI)で断片化処理して、DNAライブラリーを作製した。次世代シーケンサーを用いて、塩基配列情報を解読して、データを解析した結果、depth(データの信頼度となる指標)や検出できるSNP数(品種間で差異のある情報の量)は、制限酵素の組合せによって大きく異なることを明らかにした。また、depth、SNP数の両面から、PstI-MseIの制限酵素組合において、良好な結果が得られることを明らかにした。
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