今年度、RAD-Seq解析を予定していたサンプルについては、解析用のDNAライブラリーを調整してシーケンスの解読を終了した。これまでに取得したシーケンスデータも含めて、全データの解析作業を進めており、得られたSNPデータと形質データの関連解析を行っている。この他、サクラの栽培品種の親種候補である野生種のうち、マメザクラ、キンキマメザクラ、タカネザクラのシーケンスデータを活用することで、四国の固有種であるイシズチザクラの遺伝的起源の解明を試みた。イシズチザクラは四国の亜高山帯となる石鎚山地周辺の山頂付近の岩礫地に自生する野生のサクラである。本種はマメザクラの変種として記載されていたが、形態的な特性からキンキマメザクラとタカネザクラの雑種であるとする説が唱えられており、氷河期に南下したキンキマメザクラとタカネザクラが交雑することで誕生したと云われている。イシヅチザクラの遺伝的起源を調べるため、マメザクラ3集団(48個体)、キンキマメザクラ4集団(66個体)、タカネザクラ5集団(82個体)とイシヅチザクラ1集団(20個体)についてRAD-seq解析を行い、多数のDNA多型を検出した。STRUCTURE解析やPCA解析を行って種間の遺伝的関係を調べたが、イシヅチザクラは複雑な遺伝的組成を示すことがわかり、詳細な評価を行うためには他の野生種を含めた包括的な解析が必要なことが示唆された。
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