研究課題/領域番号 |
16K07803
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小幡谷 英一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10312810)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 雅楽 / 篳篥 / 葦 / 振動特性 |
研究実績の概要 |
蘆舌に適した葦材の寸法および性状について、宮内庁式部職楽部の篳篥奏者(以下、奏者)に対する聴き取り調査を行うとともに、2014~2016の間に熟練した葦刈り職人によって選定、伐採された葦材から、通常蘆舌に使用される第2~5節間(地面から上に向かって第1、第2…)を計332節間採取し、節間内上部の寸法および密度を測定した。また、外皮を除去し、平板加工した板状試料を用いて、蘆舌の振動部分に相当する内層部の振動特性を測定した。さらに、同様の測定を、NEXCO総研・緑化技術センターで2013年以降人工栽培されている葦材について行った。 これまでは、伝統的な工具を用いて葦の選別が行われていたため、具体的な葦の寸法についてほとんど情報がなかったが、奏者に対する聞き取り調査の結果、蘆舌に適した葦の詳細な寸法・形状が明らかとなった。葦刈り職人によって選定された葦には様々な外径や厚さのものが含まれていた(外径10~13 mm、肉厚0.9~1.7 mm)が、奏者はその中から、外径が11.6~12.1 mm、肉厚が1.25~1.35 mmの葦を選択していた。ただ、内部が黒く変色した葦は、外径や肉厚が適切でも蘆舌には使われない。この変色の理由は明らかでないが、ある種の腐朽ではないかと推察される。一方、蘆舌の振動を左右すると考えられる内層部の振動特性については、奏者によって選別された葦と除外された葦の間に明確な違いが認められなかった。また、表皮の外観(色、模様の有無)についても、選別された葦に特徴的なものは認められなかった。これらのことから、葦の外径と肉厚が、奏者にとって最も重要であることが明らかとなった。 以上の成果は、古楽器に関する国際学会(COST FP1302 WoodMusICK)および国内学会(第68回日本木材学会大会)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葦をつぶして蘆舌にする伝統的な加工法(ひしぎ)を詳しく調べることにより、円筒状の葦を平板に加工することができるようになった。その結果、蘆舌の振動部分に相当する内層部の振動特性を簡便に測定できるようになり、蘆舌に適した葦材の特性(寸法、形状、密度、振動特性)を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究により、蘆舌に適した葦材の特性(寸法、形状、密度、振動特性)が明らかになったことから、今後は人工栽培材の物性に焦点を絞る。 一方、平成30年度は宮内庁の奏者が非常に多忙となるため、当初、予定していた奏者による官能検査は中止する。
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