研究課題/領域番号 |
16K07806
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 史朗 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (70437268)
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研究分担者 |
光田 展隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 主任研究員 (80450667)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イネ / リグニン / 転写因子 / 酵母ワンハイブリッド / MYB / NAC |
研究実績の概要 |
シリンギルリグニンは、分解性に優れるため、リグノセルロースの多糖利用の際には、その含量が多いことが望まれる。また、シリンギルリグニンのユニット間結合は、ほぼβ-O-4結合からなり、低分子化した分解産物は単純な組成を有し、リグニン分解産物の利用用途の開拓に大きく貢献できる。 イネ科植物のモデルであるイネは、主にシリンギルリグニンとグアイアシルリグニンからなり、一般的にグアイアシルリグニンの割合が高い。しかし、皮層繊維と維管束鞘とではその比率が異なっており、その分子生物学的な制御機構はほとんど未解明である。また、シリンギルリグニンの増産は、これまでシリンギルリグニン生合成の初発段階に位置するCAld5Hの過剰発現によって達成されているが、遺伝子組換え技術を用いる必要があり、社会的受容性は低い。 そこで、本研究では、遺伝子組換え技術に依らないシリンギルリグニン増産手法の開発の第一段階として、シリンギルリグニン生合成の発現制御機構の解明を目的とする。具体的には、主要なイネのリグニン生合成遺伝子のプロモーター領域をベイトに用い、転写因子遺伝子からなるライブラリをプレイとして、改良型酵母ワンハイブリッド(iY1H)スクリーニングを行う。続いて、得られた転写因子の機能解析を行う。本年は、イネのシリンギルリグニン生合成の鍵遺伝子であるOsCAldH1およびOsCAldOMT1のプロモーターに対し、iY1Hスクリーニングを行ったところ、MYB転写因子等が酵母内で強く結合することを見出し、イネ科植物では双子葉植物と異なり、NAC転写因子ではなく、MYB転写因子によってCAld5Hの転写が制御される可能性が示唆された。現在、他のリグニン生合成遺伝子プロモーターのベイトベクターを構築しており、次年度はこれらのベクターを使ったiYHスクリーニングとスクリーニングされた転写因子の機能解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的の通り、シリンギルリグニンの生合成の鍵酵素遺伝子2種類のプロモーターを単離し、改良型酵母ワンハイブリッドスクリーニングを行い、これまでの知見とは異なる新しい知見を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
シリンギルリグニン以外のリグニン生合成にかかわる遺伝子のプロモーターを単離し、これらをベイトとし、これらのプロモーターに結合する転写因子をスクリーニングする。シリンギル生合成に特異的な遺伝子のプロモーターに結合する転写因子とそれ以外のリグニン生合成遺伝子のプロモーターに結合する転写因子を比較するとともに、それらの転写因子の機能を明らかにすることで、シリンギルリグニン生合成に特異的な転写制御機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請書の申請時には研究の円滑な遂行に必要な200万円の備品購入を計画していたが、実際に配分された額から支出することが困難であることが判明したため、煩雑で時間を要するが別の安価な方法で実験を実施することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、備品購入によって得られる成果と同等な成果が得られるものの、煩雑で時間を要するが安価な方法で研究を進めるのに必要な試薬及び消耗品購入に充当するとともに、謝金によって実験補助者を雇用することによって研究の加速化を図る予定である。なお、翌年度分の研究は予定通り進める。
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