研究課題
シリンギルリグニンは、分解性に優れ、低分子化処理により、モノマー化した芳香核化合物を高収率で得るのに適した構造を有している。これまで酵素遺伝子の発現制御により、シリンギルリグニンに富んだリグニンを含むポプラやシロイヌナズナなどの双子葉植物が得られているが、転写因子の制御により、シリンギルリグニンに富む植物が得られた例はない。また、今回、解析対象とするイネ科植物においては、転写因子によるリグニン改変に必要なリグニン生合成に関わる転写因子の機能解析すら、十分に行われていないのが現状である。一方、我々は、いくつかのイネの二次壁生合成に関わる転写因子については、双子葉植物のオーソログとは、制御を受ける二次壁生合成遺伝子が異なることを示しており、リグニン生合成の転写制御機構が双子葉植物とイネ科植物とでは異なる可能性が示唆されている。そこで本研究では、イネ科植物のリグニン生合成、とりわけシリンギルリグニン生合成に特異的にかかわる転写因子を改良型酵母ワンハイブリッドスクリーニングを行うことで単離することを目的とする。平成30年度は、平成29年度に得られた、イネのシリンギルリグニンおよびグアイアシルリグニン生合成の両方にはたらく酵素遺伝子のプロモーター領域を改良型酵母ワンハイブリッドスクリーニング用ベクターにサブクローニングした。順次、得られたベクターを用いて、改良型酵母ワンハイブリッドスクリーニング実験を行っており、現在もスクリーニング実験を続けている。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、平成29年度に作製した6遺伝子のプロモーターを改良型酵母ワンハイブリッドスクリーニング用ベクターにサブクローニングした。構築されたベクターを用いて、改良型酵母ワンハイブリッドスクリーニング実験を行っっており、現在もスクリーニング実験を継続している。
改良型酵母ワンハイブリッドスクリーニング実験を引き続き行い、得られた結果から、どの転写因子がシリンギルリグニン生合成特異的転写因子であり、どの転写因子がシリンギルおよびグアイアシルリグニン両方の生合成に働く転写因子であるかを明らかにする。
改良型ワンハイブリッドスクリーニング用ベクター構築に要する費用が、予想以上に安価であったため、次年度使用額が生じた。次年度は、この資金を論文執筆に要する費用に充てる予定である。
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Plant Biotechnology
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