研究課題/領域番号 |
16K07807
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅村 研二 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (70378909)
|
研究分担者 |
金山 公三 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (60356798)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ヒドロキシアパタイト / 無機・木質複合成形体 / 硝酸カルシウム / リン酸水素二ナトリウム |
研究実績の概要 |
ヒドロキシアパタイトは、硝酸カルシウムと各種リン酸塩を水に溶解させると生成し、同時に硝酸塩や硝酸などが副成する。これらの副成物は、過去の研究によると木材を活性化させて自己接着をもたらすことが知られている。そこで、本研究では硝酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムなどを水に溶解させるとともに、木粉を加えて熱圧することで接着剤を用いずにヒドロキシアパタイトを含んだ無機・木質複合成形体の作成を試みている。 今年度は、前年度の結果に基づいて硝酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムの混合物の添加率を20および40wt%の2水準とし、成形体の曲げ性能および耐水性に及ぼす熱圧温度や熱圧時間の影響について検討した。加熱温度は160~220℃、加熱時間は5~20分とした。耐水性は、煮沸繰り返し処理による試験片の重量変化率から評価した。 その結果、混合物添加率が20wt%の場合、最適熱圧条件は220℃、10分であった。一方、混合物添加率が40wt%の場合は180℃、10分であった。両者を比較すると、20wt%の成形体が全体的に高い曲げ強度を示した。また、煮沸繰り返し処理の結果、両者は処理後でも形状を維持し、良好な耐水性を示した。しかしながら、40wt%の成形体では、重量変化は小さいものの、乾燥時の重量低下率が大きいことから、無機成分の著しい溶出が示唆された。FT-IR測定の結果、カルボニル由来のピークの変化が確認され、副成物による木材の酸化が示唆された。また、煮沸繰り返し処理後でも硝酸イオンのピークやリン酸イオン由来のピークが強く現れた。成形体の高い耐水性を考えると、副生成物による木材の酸化やそれに伴う自己接着が起こったと考えられ、さらに成形体中にはヒドロキシアパタイトや副生成物が残存していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、昨年度に引き続き硝酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムの用いた成形条件と物性との関連について検討を行った。これは、前年度に木粉に対する硝酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムの最適添加量が明らかになったために、この添加量による最適熱圧条件を検討する必要があったためである。しかし、最適添加量は評価項目によって異なったために1種類を選ぶことができず、ここでは2種類の添加量について検討し、実験に時間を要することになった。また、ヒドロキシアパタイトの分布や存在は、一般にはX線結晶構造解析などの機器分析で明らかにされる。そこで複数の機器分析業者に分析を相談したところ、本研究での成形体ではヒドロキシアパタイトが木粉中に薄く分布するために検出が困難であることが分かり、分析手法の検討に時間を要したこともやや遅れている原因である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度までの結果、最適な添加量、熱圧温度、熱圧時間が見出せたので、これを基準として他のリン酸塩の検討を試みる。初めに、リン酸水素二アンモニウムに着目して研究を進める。この理由として、副成物に硝酸と硝酸アンモニウムが生成し、より木材の活性化や自己接着が期待できることが挙げられる。この他、ヒドロキシアパタイトの新たな検出手法についても検討する。
|