研究実績の概要 |
平成29年度に引き続き、ヒノキ林におけるヒノキ落枝の腐朽過程を明らかにする目的の下、ヒノキ枝の腐朽期間が明らかにされた条件下、腐朽過程を定量化できる実験を続けた。具体的には、平成28年7月に長さ20 cm、直径約10 cmヒノキ枝を、市販の洗濯ネット1枚に1つづつ入れ、徳島県阿波市ヒノキ林に、1 m間隔で、斜面傾斜方向に7列、斜面横方向に12列、洗濯ネットをペグで地面に打ち付けて、自然の環境下に置いた。749日後、平成30年7月に27個ヒノキ枝を回収し、ドリルで穴をあけ、木材サンプルをドリル削りかすとして採取し、材密度、ホロセルロース密度、リグニン密度の変化を明らかにした。尚各密度はこの削りかすと両成分の重量を、ドリル穴の体積で除し求めた。さらに、同じヒノキ林にて、ヒノキ伐採後6年、15年、23年経過したヒノキ切株より木材サンプルを採取し、同様に分析した。ヒノキ枝では、749日間置くことにより、材密度は腐朽前の87%に減少した。ホロセルロース密度は設置前の74%に減少した。一方、リグニン密度は設置前に比べ統計的に有意な減少は認められなかった。 以上の結果より、ヒノキはホロセルロースが主に分解を受け、リグニンの重量は大きな変化を受けないで腐朽が進行することが知られた。さらに、749日間の設置により、ヒノキ枝より13菌株を得た。内2菌株は、Microporus, Polyporaceaeと示唆される。1菌株はNeoantrodiellaceae, Hymenochaetalesと示唆される。これらの菌は、ITS領域の相同性が高い菌の既往の特性により、白色腐朽の性質を示すと示唆される。
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