研究実績の概要 |
森林が地球環境を保全し、持続が可能な資源の一つとして注目されている中、林野庁では「木材利用に関する教育活動」を木育とし推進している。申請者らは、これまでに子どもを対象とした木を素材にしたものづくり教室(木育活動)、それらを指導するスタッフの養成講座、現職教員や教育学部生を対象とした講座を実施してきた。 本研究においては、予防に資する木育活動の検証と支援スタッフ養成カリキュラムの開発を目的に特化した研究を行った。具体的には、熊本県長洲町の介護予防拠点施設において、木を素材としたものづくり活動(木育活動)を提供した。高齢者にとって木という素材は、金属やプラスチック等よりも馴染みがあり、その加工についても豊かな経験を持っている。調査の結果、木育活動は体操や脳トレと同程度に、介護予防に有効とされる生きがいや、やりがいを参加者は認識していることを明らかにした。さらに、木育活動実施前後での参加者の気分・感情の状態変化について、POMS2を用いて調査・分析を行った結果、木育活動で気分・感情の状態が好転しており、介護予防に効果的であることが明らかとなった。一方、長洲町での参加者数を見ると、男性は16.4%であり女性に比べ、参加の少なさが課題として挙げられる。これは全国的な傾向とされる。これを解消する対策としても、木育活動を取り入れることの意義は大きい。木育活動は、男性の外出の機会となる場の提供や、仲間づくり・交流のきっかけづくり、家族や地域住民との架け橋になることが期待され、社会面の予防を図ることに繋がる可能性が高い。 さらに、これらの木育活動を支援するスタッフの養成においては、最終年度は10年目を迎え、合計65回の講座を実施し、2,023名の修了生を輩出した。また、介護予防に特化した講座のプログラムを開発するとともに、実際に介護予防施設の職員に対して講座を実施し、その有効性を検証した。
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