研究課題/領域番号 |
16K07812
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
雉子谷 佳男 宮崎大学, 農学部, 教授 (10295199)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 植物ホルモン / スギ / 木部形成 |
研究実績の概要 |
この研究では、早・晩材形成機構を解明するため、スギ木部形成におけるサイトカイニンの役割について知見を蓄積する。平成28年度は、各種植物ホルモンの組織内分布を明らかにすることを目的とした。 スギ品種であるオビアカ2本の試験木から高さ2mおよび5m部の試料を選び、木部形成の様子を観察したところ、7月22日において晩材形成が始まっていた。植物ホルモンの局在解析を可能にするために、クライオスタットでの連続凍結切片の作成手技の改良に加えて、各種植物ホルモン定量における抽出液、精製方法およびLC/MSの条件設定の最適化をおこなった。その結果、切片5枚(150μm)ごとに内生植物ホルモンの組織内分布を明らかにできる一連の分析方法を確立することができた。その結果、晩材形成中のオビアカの各種植物ホルモンの組織な分布が明らかになった。すなわち、IAAは既往の研究のとおり、形成層に局在しており、木部および師部側に向かうにつれて減少した。ABAは形成層には局在せず、師部と木部に存在した。サイトカイニンでは活性型であるtZおよびiPは、微量ながら師部と形成層に存在した。その一方で、それぞれの前駆物質である不活性型のtZRおよびiPRは木部に局在が認められ、モデル植物にみられるように根で合成され蒸散流によって木部を移動しているのかもしれない。GA3およびGA7は検出されなかった。GA1は師部にわずかながら存在した。その一方で、GA4およびその前駆物質で不活性型のジベレリンであるGA9は師部、形成層、木部にかけて均等に分布していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種内生植物ホルモン量を、凍結切片単位で分析する一連の方法を確立できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
確立した分析方法を用いて、多数の試料を分析して知見を蓄積する。特に、早材形成と晩材形成との比較をおこなう。さらに、苗木を用いた土壌水分の影響を調べる研究の準備を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
内生植物ホルモンの凍結切片単位での分析は、技術的に極めて難しく、一連の分析方法を確立するのにかなりの時間を必要とした。そのため、実際に測定した研究用サンプル数は当初予定した数よりも少なかった。したがって、次年度に確立した分析方法を用いて多数のサンプルを分析するため、次年度の使用額が生じることとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
昨年度、分析予定のサンプルについて、今年度に分析をおこなう。したがって、繰り越した研究費は、これらのサンプルの分析に使用する。
|