本研究では、釘やボルトなどの接合具を複数本用いた接合部を合理的に設計するために、木材の強度特性を考慮した最適な接合具の配置を求める手法を開発することを目的として、下記の項目について検討した。 1)縁端距離や接合具間隔が接合性能に及ぼす影響の把握:スギ製材とCN90釘を用いて、木質構造設計規準に定められた縁端距離の基準値をもとに、距離を狭めた条件での加力試験を行い、基準距離に対する比と接合性能との関係を求めた。その結果、端距離を基準値の半分にすると降伏耐力は平均で85%、下限値で75%まで低下したが、縁距離の影響はそれほど大きくなかった。 2)最適な接合具配置を求める手法の検討:軸方向に力を受ける場合の効果的な接合具配置について検討するため、カラマツ集成材にラグスクリュー(径12mm)を複数本用いた鋼板添え板接合部の加力試験を行った。その結果、接合具を一直線上に配置した場合に比べると、千鳥状に配置することによって降伏耐力や初期剛性は変化しないが、じん性および終局耐力は向上することが明らかとなった。 3)接合具の配置がモーメント抵抗性能に及ぼす影響の把握:モーメント抵抗接合において、接合具を環状に配置した場合の接合性能の推定手法を検討し、配置の違いによる性能変化を示した。その結果、木材の異方性の影響により、同じ円周上の配置でも位置によって各ピンが荷重を負担する方向が異なることにより、モーメント抵抗性能が変化することが示唆された。上記の推定手法の妥当性を検証するために、カラマツ集成材を用いた鋼板挿入ドリフトピン接合部のモーメント加力試験を行った。その結果、異方性を考慮して接合具を配置することによって降伏耐力や剛性を向上させることが可能であることを明らかにした。
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