現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1)に関しては、予備的研究からプロテアーゼ反応条件下での激しい振盪によるセルロース繊維の濾紙からの脱離に依存する、高いバックグラウンドの問題があり、激しい振盪条件下でもhCBD-BAF/紙複合材から繊維脱落を最小にするセルロース素材の選定を進めた。その結果、年度末に漸く市販の製品サンプルから、適当な紙素材を見出すに至った。また、同素材の最適化を進めつつ、大腸菌におけるSARS-3CLプロテアーゼの安定発現系と精製系の構築を併行して検討した。先行文献(Akaji K et.al., Bioorg. Med. Chem., Vol 16, 9400-9408, 2008)を参考にしたが、大腸菌内での発現用融合タグや蛋白質発現条件の違いがあり、ほぼ一からの検討となった。結果として、可用性画分からの精製が可能で、収量も期待出来ることが判明した。一方で、精製度合を何処まで上げるか、と発現用タグを切り離した際の実際のプロテアーゼ活性の確認は、次年度の課題として残された。 研究2)に関しては、SAm2の人工遺伝子合成から検討し、当初hCBD-SAm2の大腸菌での発現量が僅かであったため、SAm2に該当する塩基配列を複数検討することとなった。予想よりも難航する可能性が危惧されたため、次年度の計画を一部前倒しして、hCBDを介して抗体をセルロース基材へ吸着・利用する課題検討を併行して開始した。最終目標は、市販のIgG抗体を広く利用可能な基盤技術開発であるが、差し当たり、特定の抗原に対する抗体分子を直接hCBDに融合利用する検討を進めた。抗体としては、ラクダ抗体に由来するナノボディで、緑色蛍光蛋白質・GFPに特異結合してGFPの蛍光輝度を上げる抗体を試した。予想以上に順調であり、当該抗体/濾紙ハイブリッドを乾燥保存させた後にも抗体活性が十分維持されることを確認した。
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